Case Study

事例紹介

業務プロセスの内部統制を強化

日本初の化学肥料製造会社として創業した総合化学メーカーの日産化学工業株式会社。同社は内部統制の強化を目指して、マスター情報の登録システムの構築にDataSpider BPM Suiteを採用。従来は煩雑で業務フローが明確でなかったマスター情報の登録・更新作業を、適切な承認フローに基づいて自動化することに成功した。コーディング不要なDataSpider BPM Suiteにより、自社スタッフの独自開発を成し遂げた同社では、今後さらに、他のさまざまな業務フローに対してもBPMを活用していく方針だ。

お客様に聞く

マスターデータとERPマスターを
ワークフローに基づき自動的に同期

2013年5月末、日産化学工業および関係会社ではDataSpider BPM Suiteを用いて独自開発したSAP ERPへのマスター登録システムの運用を開始した。このシステムは、Webシステムからデータを入力すると、必要な権限者からの承認を経た後に自動的にERPのマスター情報との同期を行うというものだ。また、カスタマイズと呼ばれる保管場所、品目階層など、SQL Serverに入力された情報を、再度、SAPに手入力するという流れも、承認後、自動移送されるように改善した。承認フローの厳密化により内部統制の強化も併せて実現された。

既存システムとの連携とコーディング不要な
使い勝手の良さが選定のポイントに

日産化学工業では、独自のWebベース情報活用システム「N-Web」からERPのマスターを登録してたが、以前からいくつかの問題点を抱えていた。 まず、承認フローが明確でなく、マスターの登録や更新のたびに承認者に別途連絡する必要があった。また、承認に漏れがあった場合には、マスターデータ側で変更した内容がERPマスターに反映されず、ERPマスターとマスターデータとの同期が取れなくなっていた。システムのパフォーマンスが悪く、業務に支障が生じるおそれもあった。内部統制の観点から、これらの問題を解決する必要があると判断した日産化学工業では、N- Web再構築の一環として、ERPのマスター登録作業を新システムへ移行することにした。ここで同社は、DataSpider BPM Suiteを活用することで承認フローを包括した新たなマスター登録システムの構築に乗り出した。

日産化学工業のIT戦略を統括する立場にある財務部情報システム室主席玉島良則氏は、DataSpider BPM Suiteを選定した理由についてこう述べる。「第一に、すでに各システム間を連携するEAIハブとしてDataSpiderServistaを導入していましたので、それと連動してシステムが作れるという点が挙げられます。また、基本的にコーディングが不要という使い勝手の良さも大きなポイントでした。SIベンダーに頼らず自社スタッフだけで新システムのほぼすべてを開発する方針でしたので、どうしてもコーディングが必要な製品では対応が難しかったのです」

登録・変更は承認者に自動申請承認を得た時のみ
マスターへ反映する仕組みに

新マスター登録システムの開発は、2012年の夏にスタートした。最初に手がけたのは、Webの登録画面の作成だった。入力画面をどのようにすればユーザーの使い勝手が良くなるかを十分に検証した上で、ワークフローの作成に取りかかった。「現場のエンドユーザーはどうしても仕事のやり方が変わることを嫌いますから、Webの画面や作業の手順が変わることに抵抗感を示すスタッフも当初はいました。そのあたりは内部統制の必要性などを訴求して納得してもらいました。新システム稼動から約4カ月を経た今では、みんながだいぶ慣れてきたなと感じています」(玉島氏)

新システムでのマスター情報登録・更新のフローは、大まかに次のようになる。まず、入力者はWeb画面からマスターの登録・更新を行う。すると、承認者(上長など)にメールが自動送信されて、入力されたマスターをSAPに登録するように申請する。申請を受けた上長は、承認者としてWeb画面から申請されたマスター情報を確認した後、問題がなければ承認ボタンを押す。すると、登録・更新用のデータが作成されてERPマスターに反映されるというわけだ。もし承認を得られなかった場合には、入力者が登録したデータは反映されず、一週間で自動的に破棄されます。「変更履歴はすべて残すようになっているので、内部統制の強化につながっています」(玉島氏)

DataSpider BPMでの開発成功を受け
今後は他の業務にも適用を検討

今回のマスター登録システムで最も苦労した点は、SQL ServerにあるマスターデータとERPマスターとの同期だった。以前のようにSQL Server側だけ変更されてERPマスターには変更が反映されない、あるいは承認を得た変更だけが確実に反映されるといったように、システム開発においてそれらの点に特に注力した。


「SQL Serverと同じ承認前の環境のワークテーブルエリアを作り、承認されたらERPに送り込むような形にしました。ログテーブルと合わせて3つのテーブルを持つようにし、その間をDataSpiderBPM Suiteがフローに従ってデータを流すのです。もし承認を得なければ、実テーブルもERPマスターも書き換えられることがなく、前述のように一週間そのままであれば変更内容は消去されます。そして、更新した内容については履歴としてログテーブルに保存されるのです。三重の手間ではありますが、このやり方だからこそ、安全で確実な同期が実現できたと自負しています」(玉島氏)


マスター登録システムは、これまで大きな問題もなく順調に稼働を続けている。日産化学工業では、他の業務のワークフローについてもDataSpiderBPM Suiteを用いてシステム化を図っていくことを検討している。その最初の対象となるのが、人事申請業務だ。社員の住所が変わった時や結婚した時などの書類申請は現在Excelで行われているが、こうしたフローもDataSpider BPM Suiteで自動化を図ろうとしている。「人事申請となると全社員が対象となることから、今のところ1000ユーザーのDataSpider BPM Suite のライセンスを、来年には全社員分の3000ユーザーまで拡大する予定です」(玉島氏)

最後に玉島氏は、同じユーザー企業の情報システム担当者に向けて、DataSpider BPM Suiteを活用する意義をこう訴える。「当社のような中堅メーカーの場合、ITスタッフも限られるので、少人数で開発も運用も担わなければなりません。だからと言って、開発をSIベンダーに丸投げしていたのでは開発コストが膨らむ一方です。同じような悩みを抱えている情報システム担当者の方は多いのではないでしょうか。そうした企業こそ、DataSpider BPM Suiteのようなツールを使えば、低コストで自力でのシステム開発が可能になることを知っていただきたいですね」

お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

*取材日時 2013年9月
*日産化学工業株式会社のサイト
*記載の担当部署は、取材時の組織名です。
*本事例は株式会社アプレッソの了解のもと、一部編集したものです。
*DataSpiderは株式会社アプレッソの登録商標です。その他の製品名、会社名は各社の登録商標もしくは商標です。

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