Case Study

事例紹介

積極的な海外展開を支える商品勘定・物流システムのデータベース基盤を刷新

ビジネスの成長を力強く牽引するITでありたい。このような思いから、株式会社良品計画(以下、良品計画)は、商品勘定・物流業務システムのデータベースサーバーにOracle Exadata Database Machine(以下、Oracle Exadata)を導入した。決め手は安定した処理性能。繁忙期や販売キャンペーン期間中などピーク時でも、在庫引当のリアルタイム処理や単品単位の原価計算などのバッチ処理を余裕をもっておこなえる基盤が完成した。

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ビジネスの成長を牽引する商品勘定・物流向けIT基盤の整備

良品計画は、無印良品の企画・製造・販売をおもな事業とし、「実質本位の商品をより安く」という思想で、自社で企画・開発した商品だけで構成する専門店を展開するグローバル企業である。

2014年2月現在の国内店舗数は、直営が269と商品供給のみが116の計385。海外では、中国・台湾・香港・韓国・フランス・イギリス・タイなど、24の国と地域に255の店舗を展開している。また、ECサイト「無印良品ネットストア」では店舗の役割を補完。近くの店舗にはない豊富な商品からネットで選んだものを店舗で受け取る仕組みを実現するなど、早くからオムニチャネル化に取り組んできた。

このようなビジネスの成長を力強く支えていくため、良品計画はITへの投資を積極的に進めてきた。「現代においてITを使わない物流など考えられません」と語るのは、商品勘定・物流向けIT基盤の運用管理を統括する同社 情報システム担当 運用管理課長の安田 俊治氏だ。「とくに海外に出店する際、ITが“足かせ”にならないようにしたい」との考えから、新しい国や地域に進出する際の準備期間の短縮にも努めているという。たとえば、業務アプリケーションの標準形をあらかじめ用意しておくことで、スクラッチ開発ではあっても、国や地域ごとの業務システムを2カ月程度で構築できるようにするといった工夫だ。

海外スピード展開とリアルタイム化に向け処理の遅延が顕在化

良品計画が最重要目標に位置付けていたのは、リアルタイム化への挑戦と海外展開時の安定稼動だ。競争力の高い商品を揃え、利益を上げるため、企画から販売に至る一貫した原価管理を単品ごとにおこなっている。また、ネットとリアル店舗の融合に向け、在庫管理をすべての店舗と物流センターにおいて、リアルタイムで一元的におこなってきた。しかし、こうした処理はサーバーに大きな負荷が集中するため、実現に二の足を踏む企業も少なくない。一方、海外展開においては、日本国内で集中管理する体制をとった。これは、地域ごとにサーバーを立てると立ち上げの準備が長期化することを懸念してのことだが、1か所に集約すると処理能力や障害対応力が問われることになる。

しかしすでに、課題は顕在化していた。オンライン応答の時間が同社の基準を超えてしまう。「とくに春の繁忙期や販売キャンペーンの終了間際など、ユーザーからのアクセスが集中する時期であっても、レジの待ち時間が長くなる”“商品をカートに入れてから決済までに時間がかかるということのないよう、IT基盤の整備が必要です」と安田氏は話す。応答時間を左右するおもな要因が、データベースサーバーの処理性能である。「店舗数が増えるにつれて、データ件数も増大してきました。ストレージの容量にはまだ余裕があったのですが、データベースサーバーのリソースは不足しがちでした。その都度CPUやメモリを追加して対処していたのですが、そうした対症療法でいつまでもしのげるわけではないことはわかっていました」と、安田氏は振り返る。

転機となったのは、2006年に導入したハードウェアの保守切れである。リプレースの検討を開始した201212月時点のデータベースサーバーは、商品勘定システム用に2台、物流システム用に2台の計4台。ストレージや関連システム用の機器を含めると、フルサイズのラックで5本分のスペースを占める大規模なハードウェア構成だった。これらを最新鋭の製品にリプレースし、オンライン処理の応答時間の短縮化や、発注確定処理など業務開始までに必要なバッチ処理を高速化する。こうした目標のもと、次期ハードウェアの選定プロジェクトが始まった。

処理能力の高さと可用性を評価し
Oracle Exadataによるリプレースを決定

データベースサーバー用の次期ハードウェアを選定するにあたって良品計画がもっとも重視したのは、もちろんビジネスを止めない安定性だ。「当社の今後のビジネス展開も踏まえ、『オンライン・トランザクションの件数が3倍になってもレスポンスタイムが当社の基準値を超えないこと』を1つの目安としました」と安田氏。可用性については、従来と同様の「24時間365日の無停止稼動」に加えて、「メンテナンス時もシステムを停止させないこと」も要件とした。

これらの要件をメーカー、およびベンダー各社に提示したところ、日本オラクルを含む2 社が提案書を提出。すでに導入しているユーザーも訪問して実際の状況を確認。Oracle Exadataを採用することに決めた。「イニシャルコストもランニングコストもそれまでのサーバーを下回り、より高い価格性能比が得られることを評価しました」と安田氏は語る。

新環境ではデータベースをOracle Exadata上に集約し、性能と安定性を重視する構成に切り替えた。「Oracle Exadataは当時使っていたサーバー4台分以上の処理能力があり、負荷がかかる繁忙期やキャンペーン期間にも良好なレスポンスタイムが得られると判断しました。またこれまでは、障害が発生したときにハードウェアとソフトウェアの問題の切り分けに時間がかかっていました。複数のデータベースを集約するにあたり、両方のサポートを1つのベンダーから受けられるため、調査と回復に要する時間を短くできるはずです」(安田氏)。

購入のための社内手続きに移ったのは20135月のこと。これと並行して設計、実装、システム移行といった作業が進められた。

「設計以降の作業は、当社の商品勘定/物流システムの開発・構築・運用・保守を20年近く担当している株式会社ワイ・ディ・シー(以下、ワイ・ディ・シー)に引き続き任せることにしました。Oracle Exadataなどのハードウェアも、ワイ・ディ・シー経由で購入しています」(安田氏)。

今回のプロジェクトを担当したワイ・ディ・シー ビジネスソリューション事業本部 ビジネスソリューション第1部 部長の西川 幸一氏は、「設計に要した期間は約2カ月。業務アプリケーションはそのままの状態でOracle Exadataに載せ替え、データはエクスポート/インポートで移行しました。データベースサーバーの設計とパフォーマンス・チューニングに関してはOracle Consultingの支援を受けました。データベースは1カ月ほどで移行完了。無停止稼動を支えるため、運用にはOracle Enterprise Managerを利用したパフォーマンス・モニタリングとチューニングを実施しています。上位サポートサービスのOracle Advanced Customer Support ServicesのQuarterly Patch Deployment Serviceによるパッチ適用サービスを受けており、助かっています」と説明する。前システムの移行ではOSバージョンの違いによる初期トラブルに悩まされたが、Oracle Exadataにしてトラブルはないと語る。
良品計画は、データベースサーバーのリプレースに合わせて、データベースに対するアクセスを監視・監査するためのセキュリティソフトウェアOracle Audit Vault and Database Firewallも導入した。「従来のシステムでもデータベースに対するアクセスの監視・監査は実施していたのですが、運用での工夫も必要でした。この機会に内部統制のための専門的な管理・監視ソフトウェアを導入することで、運用だけでなく“仕組み”でも監視・監査が実施できる体制にしました」と、安田氏は話す。

アプリケーションの変更なしで画面遷移・バッチ処理が
従来比1/41/6へ高速化

基本的にはデータのみのシステム移行だったこともあり、本稼動までの期間はきわめて短かった。Oracle Exadataの採用決定から7カ月後の201312月には商品勘定システムがOracle Exadata上で稼動を開始。翌20142月に海外物流システム、5月に国内物流システムが本稼動を迎えた。

導入によるレスポンスタイムの向上効果も、十分に満足できるものだった。たとえば、在庫引当処理に要する時間は、リプレース前のシステムと比較して約1/4になった。「店舗からも本社の商品部からも『オンライン画面がものすごく速くなった』『今までと違ってきびきび動く』といった声が寄せられました」と安田氏は話す。

統計などのバッチ処理も速くなっている。たとえば、物流センター向けのピッキングリスト/出荷指示リストを作成するための時間は1時間から10分へと大幅に短縮。2時間かかっていた発注確定処理も30分で終わるようになり、朝4時から始まる物流センターでの業務に影響が及ぶ心配がなくなったと胸をなでおろす。

今後見込まれる導入効果としては、データセンター費用の削減がある。「4台のデータベースサーバーを1台のOracle Exadataに集約・統合した結果、ラック本数は5本から2本に減りました。弊社は外部のデータセンターを利用していますので、これまで使っていたサーバーを撤去・搬出することによってランニングコストを減らせることでしょう」(安田氏)。

新しい国や地域への進出も2カ月で
リアルタイム化で営業判断のスピードも向上

良品計画がさらに加速させようとしている新しい国や地域への出店を、今後はOracle Exadataによる新しい商品勘定システムと物流システム用のデータベースサーバー基盤が支えていく。2014年に出店済み、またはその予定となっているのは、マレーシア(2014 3 月)、オーストラリア(2014 7 月)、カナダ(20149月)の3カ国。「海外向けの商品勘定/物流システムの原型はすでにOracle Exadataに載せてありますので、2カ月程度の準備期間があれば、ビジネスルールや法制度が異なる国や地域にも出店できます」と安田氏は胸を張る。

また、処理能力の向上によって生まれた余裕時間を本部へのサービス向上に活かす構想もある。たとえば、従来は月次でおこなっていた『未実現利益計算』の処理を日次でおこない、商品部による販売の継続/終了の判断を随時可能にする予定だ。

「国内物流、商品勘定に加え、複数の海外拠点の物流も集中して支える、まさに24時間止められない状況です。もはやOracle Exadata以外の選択肢はありません」と安田氏が締め括ると、西川氏も力強くうなずいた。

お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

*本事例は2014年7月時点のものです。
*本事例はORACLE MAGAZINE 日本版 Vol.21 2014年8月28日号に掲載された記事を日本オラクル株式会社の許諾のもと、一部編集したものです。
*株式会社良品計画のサイト
*OracleはOracle Corporationおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。その他の製品名、会社名は各社の商標もしくは 登録商標である場合があります。

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