Case Study

事例紹介

方法論に基づいた準備作業により、あいまいさを排除し移行作業を最適化

三菱ケミカルホールディングスグループ(以下、MCHC)では、グループで共同運用する大規模EDIシステムをオンプレミス環境からプライベートクラウド環境に移行。ワイ・ディ・シーは移行プロジェクトの技術サポートを担当しました。その経緯について、EDIシステムの構築・運用を担当する三菱ケミカルシステム株式会社 通信統合システム事業部 通信システム3部 並木 秀則氏と若林 智之氏に詳しく伺いました。

お客様に聞く

グループで共同利用するEDIシステムのマイグレーションを
ワイ・ディ・シーが全面的にサポート

今回、ワイ・ディ・シーがサポートしたシステムの概要および、ワイ・ディ・シーの担当した業務について教えてください。

2015年2月、これまでオンプレミス環境で運用してきたEDIシステムをプライベートクラウド環境に移行しました。

このEDIシステムはMCHCの共同利用インフラとして、商社などの取引先とグループ各社が取引データを電子交換する機能をSaaS型で提供しており、三菱ケミカルシステムが構築・運用を担当しています。システムの利用概況は次の通りです。

●EDIシステム: ACMS-E2X
●接続先数: 約500社
●ファイルの種類: 約2,000種類
●月間転送回数: 約13万回/月
●伝送量: 約4GB/月

ワイ・ディ・シーには、今回のインフラ移行に関して「設計」から、移行に必要なEDIシステムの「改修」、さらには移行の「リハーサル」や「実作業」までを全面サポートしてもらいました。

EDIシステム構成

移行前

移行後

メーカー依存を脱却し、標準技術を使用した
プライベートクラウド環境にEDIを移行

今回、EDIシステムをプライベートクラウドに移行した理由を教えてください。

オンプレミスな環境は、信頼性を確保する冗長性や、RPOに関わるバックアップ等、造りがハードウェア技術への依存が大きく、属人化して部分的にはメンテナンスできない状況に陥っていました。そのため、「次世代に引き継げるシステム」をコンセプトに、プライベートクラウドの標準サービスを組み合わせて、システムを移行しました。標準サービスを利用する事で、その技術要素の技術者が担保できるのです。

プライベートクラウド環境に構築する際の課題を教えてください。

オンプレミスとクラウド環境のサービスレベルの差を吸収する必要がありました。
複数のサーバで構成されたEDIシステムをオンプレミスからクラウドに移行するには、ただ動かすだけでなくサービスレベルを意識しながら移行設計を実施する必要があります。

これらの課題に対して、短期間で、安全・確実、かつ・利用者の手を煩わすことなく移行を成功させるためには、インフラや運用に関する経験を持っている三菱ケミカルシステムと、EDIシステムに関して知識と経験、ノウハウを持ち合わせたワイ・ディ・シーの協力が必要だと考えました。

その他の課題を教えてください。

他の大規模開発案件との関係で、インフラ部門のみでの短時間・ピンポイントで移行を実行する必要がありました。
そのため、従来の移行方法(新規構築・逐次移行)がとれませんでしたので、サーバ切替による一括移行の方法を探していました。

ワイ・ディ・シーからの提案は、
「安心して任せることができる」と
判断する根拠があった

ワイ・ディ・シーの提案を採用した理由を教えてください。

ワイ・ディ・シーからの提案は、マイグレーションをどう実現するかという流れを広範囲な関連事項にわたり明確にしたもので、「安心して任せることができる」と判断するのに十分な根拠を示してくれました。その主なポイントは次の通りです。

     

【採用理由1】方法論やプロセスが明確
ほかのベンダからの提案が単純な移行手順の提示だったのに対して、ワイ・ディ・シーは移行を成功させるための方法論とプロセスを提示してくれました。作業内容が構造化(メニュー化)されていたという点も重要な評価ポイントでした。

【採用理由2】技術力が高い
EDIシステムに詳しく、相談にも丁寧に対応してくれるので、安心してサポートを任せられると判断しました。

【採用理由3】MCHCおよび三菱ケミカルシステムに関する理解度
ACMS導入当初から、弊社の状況や担当者の想いをくみ取った提案活動を根気強く継続され、信頼のおけるパートナー企業としてお付き合いさせて頂いていました。そんな中、本案件を相談していたのですが、弊社のEDIの位置付けや構成を理解の上、課題に対して納得のいくソリューションをタイムリーに提案頂き、プロジェクト方針を導いてくれました。

方法論というのはどのようなものでしょうか。

EDIシステムの基本的な移行について、どのフェーズでどのようなタスクが必要かが基本メソッドとしてまとめられていて、さらに今回の移行の特徴である分散システムの移行や、HP-UXからLinuxへの移行などについても実施方法が示されていました。
提示されたメソッドは以下のようなものでした。

移行方法論(今回適用したメソッド)

方法論に基づいた準備作用により、
あいまいさを排除し移行作業を最適化

実際の移行作業に関して、苦労した点やトラブルなどはありませんでしたか。

事前準備作業で、ワイ・ディ・シーに移行対象ファイルを精査してもらったところ、全てのサーバのスクリプト、設定ファイル等をあわせると5000ものファイルが該当しました。本番移行当日に移行するファイルが多いと所要時間に影響がでます。そこで、移行対象ファイルの実行環境分析を行い、事前作業で移行しておけるものと当日作業で移行しなければならないものに分類しました。前日までに事前作業を実施することによって当日の作業時間の短縮につなげることができました。

そのほかにも、現行システムの調査からテストに至るまで、EDIサーバ構築、ネットワーク、OSに関する知識に基づいた詳細な調査、検討、設計をしてもらいました。その結果、システムの棚卸をすることができ、不要なスクリプトを排除した状態で構成管理を新たにスタートすることもできました。

上で述べたように確実にワイ・ディ・シーが移行プロセスを実施したおかげで、大きなトラブルもなく、スケジュール通りに移行を完了できました。

また、移行手順書の読み合わせやリハーサルを繰り返すことで、あいまいさを排除して作業を最適化できたことが、トラブルを回避し作業時間を短縮できた要因となったと考えています。

それらのベースとなった方法論には、単なる移行方式や手順だけでなく、役割分担、段階移行の考え方、テスト実施の考え方、リハーサルの実施回数、本番移行の事前準備や体制等が含まれており、その内容は当社が期待していた以上のものでした。

しかも、さまざまなテンプレートがあらかじめ用意されているので、手間をかけることなく詳細なドキュメントを残すことができました。その結果、移行プロセスを明確化するとともに属人化を防ぐことにもつながっています。

移行方法論(移行プロセスの概要)

「事前準備の周到さ」、「妥協しない姿勢」、
「チーム力の高さ」を評価

ワイ・ディ・シーへの評価をお聞かせください。

ワイ・ディ・シーの提示してくれた方法論が優れていたことはもちろんですが、事前準備の周到さや妥協しない姿勢、そして組織としてのチーム力の高さがあったからこそ、今回のプロジェクトが成功したと捉えています。特に優れた技術力を原動力にして、最後までやり遂げるという点に関しては当社と社風が似ていると感じました。

また、実作業においても、課題発生時のレポーティングや課題管理をはじめ、調査結果や検討内容なども、わかりやすく一覧表などにまとめて説明してくれるので、確認事項や問題点を的確かつ迅速に把握でき、とても助かりました。

今回の移行プロジェクトは無事完了しましたが、今後EDIシステムに関して、DR(ディザスタリカバリ)環境などの構築を考えています。また、将来的には取引データ以外のデータも取り扱うトレーディングシステムとして応用していきたいと考えており、ワイ・ディ・シーには今後も相談に乗ってもらいたいと思っています。


三菱ケミカルシステムにおけるEDIシステム移行プロジェクトメンバーのみなさん(後列)と、ワイ・ディ・シーの担当者(前列)


お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

*取材日時 2015年8月
*三菱ケミカルシステムのサイト
*記載の担当部署は、取材時の組織名です。

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