シミュレーションと生産管理~実践編~

2013.10.04

今回は「生産シミュレーションシリーズ」の第2弾として、前回から引き続きシミュレーターソフトを製造販売されている専門家(Tyecin株式会社様)に、生産シミュレーションの実践編をご紹介頂きます。

◎シミュレーションソフトの紹介

私達Tyecin(タイシン)株式会社の取り扱い製品の1つに、生産管理シミュレーションソフト(ManSim:マンシム)があります。このManSimを利用しながら、半導体工場を例にシミュレーション事例を紹介してきたいと思います。

◎半導体前工程の特徴

半導体前工程は、ウエハと呼ばれる円盤のシリコンスライスを加工します。
ウエハは、ロットと呼ばれるケースに入れられ、ロット単位で管理されます。
25枚程度のウエハが1つのロットに入れられます。
繰り返しが多く、総処理時間が長いことが、一般に知られています。

◎例1

■想定の仮想工場

実際の半導体前工程は複雑ですが、ここでは簡単な例を用意します。
生産装置台数は5台、それぞれの処理形態は、完全に独立しています。
品種は1種類のみです。

製造工程の詳細は、下図のように「酸化」と「検査」を2回通過する例を利用します。
5種類の工程、合計7工程を通過する例になります。

ProcessFlow.png

1ロットが完成するのに総処理時間は325分です。

総処理時間 = 325 分

工程で一番長い時間は、「現像」の120分、または「酸化」を2回処理した時の120分です。
1週間休みなしで稼働できたとして84回処理できるため、1週当たりの最大生産量は84ロットになります。

1週当たりの最大生産量 84ロット = ( 7日 x 24時間 x 60分 ) / 120 分/回

■目的

1週間の最大生産量である84ロット生産するまでの各工程の待ち時間の推移を調べます。

■結果

WaitByStep.png

1回目のシミュレーションは、週当たりの投入量1ロット。
2回目のシミュレーションは、週当たりの投入量2ロット。
n回目のシミュレーションは、週当たりの投入量nロット、と回数別に投入量を変化させ、生産可能な最大ロット数まで増やします。
それぞれのシミュレーションで、各工程の待ち時間の推移を調べました。

横軸は週当たりの投入ロット数です。
縦軸は待ち時間を表しています。

84ロット生産時の待ち時間は、工程5の「現像」で50分、工程6の「酸化」で20分の待ち時間となりました。
総処理時間の21%程度になります。

84ロットに達するまでの各工程の待ち時間も、興味深い結果になりました。

35ロット付近から60ロット付近までは、投入タイミングと生産設備の能力がかみ合わずに、待ち時間が発生しています。
同じ「酸化」工程でも、1回目と2回目で待ちの比率が変化がしています。

69ロット以降では、「現像」に待ち時間が増えていくのが確認できます。

◎例2

■想定の仮想工場

比較的小規模な半導体工場を想定します。
生産装置台数は60台、処理形態別に44群に分類することができます。
品種は6種類あり、どの品種も約200工程で完成するとします。
1週当たり1205ウエハ、48ロットの生産計画を基準とします。

シミュレーションは、150日間行います。
指定の生産計画を続け、後半120日のみで統計情報を取得します。

■目的

6品種のなかから1つを選び、週当たりの生産量を1ウエハずつ増やし、装置グループ別の処理待ちウエハ数の推移を調べます。

■結果

AvgWait.png

51回のシミュレーションを行い、特に待ちの多い5つの装置群に着目してみました。

横軸は週当たりの投入ウエハ数です。1205から1255までの51点を用意しました。
縦軸は平均処理待ちウエハ数です。

装置群2, 3, 4, 5の処理待ちウエハ数が安定していることから、それぞれの生産能力に余力があることが予想できます。

装置群1は、1205枚近辺ではウエハ数は安定していますが、その後生産強度と比例して待ちウエハ数を増やしています。
最終的には、装置群2を追い越し400枚程度まで上昇しています。

増産に対応するためには、装置群1に投資をしていく必要があると、意思決定できます。
もし、過去のデータだけで投資対象を選ぶ場合には、装置群1が投資対象にならないかもしれません。

◎まとめ

生産管理で管理されている項目を実例に挙げ、その挙動を調べてきました。
これらの管理項目は、管理されながらも、その予測が難しいことを理由に、経験や勘に依存している部分が多い項目でした。
経験は過去の事例の蓄積であり、全くの未知には適用しにくいものです。

シミュレーションの結果から、それらの挙動を見ることができました。

シミュレーションが製造現場の「見える化」の選択肢の一つになるかと思います。

* Tyecin株式会社
http://www.tyecin.co.jp/