シミュレーションと生産管理~入門編~

2013.08.13

シミュレーションと生産管理~入門編~


今回は「生産シミュレーションシリーズ」の第1弾として、シミュレーターソフトを製造販売されている専門家(Tyecin株式会社様)に、生産シミュレーションの入門から、実践までをご紹介頂きます。

◎はじめに

私達Tyecin(タイシン)株式会社は、半導体産業や液晶産業から一般製造業における製造ラインシミュレーション、スケジューリングソフトウェアを提供しております。

この場をお借りして、弊社が専門とするシミュレーションに関する話題を連載いたします。
シミュレーションの概念は、非常に幅広いものです。その中のほんの一部でも、このコラムを通じて、皆様にご理解いただければ幸いです。

◎シミュレーションとモデル

■シミュレーションとは?

シミュレーションといわれると、地球シミュレーター、フライトシミュレーターなどを思い浮かべることができます。
どことなくアカデミックな響きがあり、日本語表現を寄せ付けない威圧感すら感じてきます。

本稿はシミュレーションに関するコラムです。
理解を深めるためにも、横文字のままにしないで、誤解を恐れずに日本語にしてみたいと思います。

辞書などから、次のような記述を見つけました。

- シミュレーションとは、模擬実験である。
- 模擬とは、まねること。
- 実験とは、理論や仮説が正しいかどうかを人為的に一定の条件を設定しためし、確かめてみること。

本稿では、シミュレーションとは仮説検証を目的とした模倣実験と考えたいと思います。

■モデルとは?

シミュレーションが話題になると、キーワードとして「モデル」が登場してきます。
これも、日本語にしてみたいと思います。

手元の資料には、モデルについて次のような記述があります。

- モデルとは、システムの挙動、または、あるべき挙動を述べた数学的もしくは論理的な関係。

本稿でも、モデルは関係であると考えたいと思います。

■シミュレーションとモデル

シミュレーションに限らず、私たちはモデルと呼ばれる関係を利用し、予測などに役立てようとしていました。

一方で、真なる関係を導きだすには、私たちはあまりにも無力です。
データと呼ばれる測定値には、測定誤差、読み取り誤差などの、誤差がすでに含まれています。
世の中に多くのモデルがあるように、すべての要因を考慮することなど、到底不可能です。

だからこそ私たちは、一部の要因を抽出し、関係を仮説し、検証を進めます。
このサイクルが、シミュレーションの目的になります。

◎シミュレーションのメリット

特徴的な長所をいくつか挙げていきたいと思います。

1. 時間短縮

シミュレーションの世界では、時間を進めるのは自由自在です。

2. 低予算

本当の実験と比べれば、低予算です。
首都高速の渋滞を計測するのに、現実の交通システムを構築するには、巨額の投資が必要になります。

3. 社会的悪影響の少なさ

タンカーが座礁したときの原油の拡散状況を調べるために、公海上に原油を流すことは許されません。
コンピューターシミュレーションの場合には無害です。

4. 試行回数の多さ

時間、費用、社会的悪影響の少なさから、気軽に試行回数を増やすことができます。
また、さまざまな要因条件の結果を検証することができます。

5. 計算量

人間が計算できないような膨大なデータ処理や解析ができます。

◎シミュレーションの限界

シミュレーションもやはり万能ではありません。いくつかの限界があります。

1. 技術的な難しさ

技術的な側面から、シミュレーターに取り込むことが難しい要因があります。
飛行訓練用のシミュレーターなどでは、パイロットに加速度を与えることが難しいといわれています。
また、人間の気まぐれやミスなども取り込むことが難しいとされています。

2. モデル化

模擬実験の「模擬」が示しているように、本物を作ることが目的ではありません。
現実世界の完璧な複製を追及する人がいますが、間違えています。
一方で、過度の単純化をして「模擬」にならない場合も見られます。

本質だけを残し、余分な部分を取り除くことが大切です。
これこそがモデル化です。

ではなぜ、「シミュレーションの限界」にモデル化をあげているのかというと、モデルはシミュレーションの成否に決定的な影響を及ぼします。
そして、できの悪いモデルを利用していても、たまたま結果がよかった場合、その結果を信用しやすいことに問題があります。

3. 目的別モデル化

当たり前ですが、目的別に構築しなければなりません。

そのためには、都度条件の抽出、適合度の検定などを繰り返す必要があります。
一部には、この手間を惜しむあまりに、別の目的のモデルを流用している場合があります。

◎シミュレーションの活躍の場

■訓練や理論

本稿では、シミュレーションを実験の一部と定義しました。
しかし現実には、訓練や理論の一部としても利用されています。
飛行訓練用ではフライトシミュレーター、流体力学では風洞実験が主流となっている現状からも、実験、訓練、理論で活躍していることも、忘れてはいけません。

◎生産管理とシミュレーション

■スケジューリング問題

スケジューリング問題の解法にS. M. Johnsonの方法などがあります。
これらの数式は、適用条件が厳しいため一般的ではありません。

連続的な数値を扱う数式を確立できたのであれば、微分法にて最適値をもとめるのが一般的です。
しかしながら、数値が離散的であったり、数式が作成できないのであれば、理論的な最適値を求めることは非常に難しくなります。

スケジューリング問題解決には、シミュレーションソフトやスケジューリングソフトを使い、解のなかで最適な条件を採用するのが一般的です。

■意思決定ツール

生産管理者の悩みは尽きません。解決策を選ぶときも、その効果の大きさと副作用を常に考えねばなりません。

バッチ効率と生産完了までの時間は、背反な関係として一般に知られています。
バッチ効率を向上させるためには、処理待ち時間が必要になり、生産完了までの時間が増えることになります。
しかし、この関係が正確な数式などに表されることは、非常にまれです。

同様に、2つが成り立たない関係があります。

平準化のためロットサイズを小さくすべきか?
小さいロットサイズは、処理効率の低下を招くのか?

処理順序を納期順に変更すべきか?
納期遵守率がどれほど向上し、段取り効率がどれほど低下するのか?

投資効果を予測するには、難しい場面もあります。

ボトルネック装置の生産性の向上は、工場全体の生産性の向上と関連することは、容易に想像できますが、数値に表すことは簡単ではありません。

仮想工場をソフトウエア上に再現できると仮定すると、これらの関係を明確に数値化することができます。
現在の工場と、改善後の工場を容易に比較することができます。
効果と副作用を比較しながら、検討することができます。

シナリオ別に結果をプロットすれば、これまでに気づかなかった関係を見つけることができるかもしれません。

◎終わりに

シミュレーションの長所、短所、実際の活躍の場などを紹介してきました。
次回は、実際のシミュレーションソフトの解析結果を交え、利用方法を紹介していきます。


* Tyecin株式会社
http://www.tyecin.co.jp/