日本製造業が今取組むべき DXテーマとそこでのAI活用

2020.08.20

こんにちは。YDCのシマです。

ビジネスにおけるIT技術のトレンドは激しく変遷しています。そして、その変遷は技術者のみならず、産業界の経営層やビジネスリーダー層も注目しています。そして今もっとも注目されているといえるのがAIです。

AIが何故、技術者のみならず、産業界の経営層やビジネスリーダー層からもこれほど注目されているかというと、まさに今世界中で起きつつある「インダストリー4.0(第4次産業革命)」と言われる大変革の潮流、それを実現する上で欠かせない技術だからに他有りません。

しかし、日本の製造業においてのAI活用は、未だに企業内に閉じた「業務効率化」や「省人化」、つまりは「カイゼン」活動への利用に留まっている場合が多く見受けられます。

今回のコラムでは、現場改善の目線でAIをどう活用するではなく、日本の製造業が「インダストリー4.0(第4次産業革命)」という潮流に取り残されない為に、製造業が自らの意思で起こすべき「デジタルトランスフォーメーション」とは何か、そこでのAI活用についてお話しします。

もくじ

  1. 1.製造業のAI導入
  2. 2.「大量生産モデル」のまま「スマートファクトリー」では勝てない
  3. 3.マスカスタマイゼーションにおけるAI活用の可能性
  4. 4.顧客と工場を繋げる設計モデルの獲得が成功のカギ

製造業のAI導入

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ICTのビジネス活用が一般的になってきました。そんななか、最新のテクノロジーといえるのが、自律的に判断し、学習を行うAI(人工知能)です。ニューラルネットワークやディープラーニングといった技術により、これまで人間が行っていた業務のいくつかを代替できるほどに進化しています。

国内の業界別に導入件数を見てみると、フィンテックに代表されるように金融業での導入例が多いようです。製造業での導入件数は、他業種と比較すると決して多くはありません。製造業での分野ごとに見てみると、製造工程や研究開発にAIを導入するケースが目立っています。

製造業のAI導入において欠かせないキーワードが「インダストリー4.0」と「スマートファクトリー」です。それぞれについて以下で簡単にご説明します。

世界変革の大きな潮流である「インダストリー4.0」

「インダストリー4.0」とは、「第四次産業革命」の事であり、過去起きた産業革命に匹敵する21世紀の世界的な変化を表す言葉です。ネットワークやIoTを駆使し、企業や産業という垣根を越えて繋がり、今より数段次元の違うレベルで産業全体の生産性向上を目指すというコンセプトです。従って発祥国であるドイツでは、企業内に閉じた活動ではなく国家プロジェクトとして推進されています。

なお、日本では製造業を中心とした産業に偏らず、より社会全体の変革にコンセプトを発展させた「ソサエティ5.0」が打ち出され、その一つの要素として「インダストリー4.0」に相当した「コネクテッドインダストリーズ」を位置付けております。

スマートファクトリーとAI活用の期待

第一次から第三次産業革命まで、それぞれ産業革命を可能とした中核となる技術的イノベーションがあります。第一次は蒸気機関の様な動力を活用した機械システム、第二次は電力を活用した大量生産ラインシステム、第三次はエレクトロニクスとITによる自動生産システムなどです。第四次産業革命である「インストリー4.0」では「サイバーフィジカルシステム」(CPS:Cyber-Physical System)という技術を活用した「スマートファクトリー」実現がそれにあたります。

「サイバーフィジカルシステム」(CPS:Cyber-Physical System)とは、現実世界(フィジカル空間)の情報をデジタル化しサイバー空間へ送る。サイバー空間でこのデータを解析し、その結果を現実世界にフィードバックする。このサイクルを回す事で、これまで実現できなかった次元での「生産性向上」を目指すシステムの事です。

「スマートファクトリー」では、この「サイバーフィジカルシステム」(CPS:Cyber-Physical System)を活用して、先ずは工場に閉じて次元の違う生産性を実現するところから始まり、その次に工場と工場を繋ぐ、さらには物流や消費者を繋ぐなど社会規模での実現を目指していきます。そして「サイバーフィジカルシステム」(CPS:Cyber-Physical System)としての一連のサイクル、データ収集、解析、分析、フィードバックの中の「分析」にAIを活用する事で、人を介さない自律的かつ高精度のシステムが実現できると期待されているのです。

「大量生産モデル」のまま「スマートファクトリー」では勝てない

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日本製造業では、先述した通り工場現場主導でのAI活用、つまりは「カイゼン」ベースの活動が多く見受けられます。しかし今の生産モデル、生産プロセスのままAIを活用し効率化するだけで果たして生き残れるでしょうか。

確かに、抜本的な生産スループットの向上、つまりは供給力が高まる可能性は高い。しかし、供給力のみ高まっても、提供価値を高めなければコストダウン戦略一択しかありません。

日本にはエネルギーや素材などを輸入に依存しています。また、国内市場の成長性も低く海外市場を狙う必要もある。そこで、関税などの政策的な対応を取られたら、「スマートファクトリー」による原価低減視点での優位性のみで生き残るのは非常に厳しいと言わざるを得ません。

「マスカスタマイゼーション」シフトのために顧客接点をデジタル化せよ

つまり日本製造業は提供価値増大を指向すべきであり、その為に日本の製造業が今取組むべきDXテーマがマスカスタマイゼーションです。

マスカスタマイゼーションとは、顧客個別の要求への対応、つまりは「カスタマイズ」を「大量生産」に匹敵する高効率で実現するというコンセプトの事であり、これは「製造(造る)」に閉じた改革では絶対に実現できません。「製造(造る)」、「設計(創る)」、「営業(売る)」を三位一体で変革させる必要があり、特に重要な事は「営業(売る)」の改革、つまりは顧客接点をどう変えるかなのです。

何故なら、幾ら工場側が多品種少量生産を実現できても、その多様な要求仕様をお客様に対して売る事ができなければ意味がありません。つまり「スマートファクトリー」を目指すとしても工場に閉じたスマート化ではなく、お客様との接点と如何にデジタルで接続しお客様の多用なニーズを如何にデータとして獲得するか、つまりニーズデータ収集の仕掛けが重要となります。

これから「スマート化」された社会で価値を出す企業になるならば、今からニーズをデータで収集/蓄積/分析する仕組み構築に投資を始めなければなりません。その手始めは、顧客との接点である「受注プロセス」に改革を起こす「マスカスタマイゼーション」改革から始めるべきです。

マスカスタマイゼーションにおけるAI活用の可能性

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製造業のマスカスタマイゼーションにおけるAIの可能性をより深掘りしてみましょう。

一例といえるのが、「CPQ」への活用です。CPQ(Configure Price Quote)とは、顧客の要求から製品仕様や見積もりを自動的に出す試み、もしくはそのためのツールを指します。大量生産と個別受注を両立するためには不可欠なものです。

以下では、このCPQにおけるAIの可能性についてより詳しくご案内します。

AIの可能性_①仕様確定の精度向上

CPQはあらかじめ設定しておいたルールに基づいて、顧客にレコメンドする製品の仕様・見積もりを確定します。AIによってこのレコメンドの精度や柔軟性が向上し、より実用的な顧客要求に沿うものになっていくでしょう。AIの特性である学習機能が生かされると考えられます。

AIの可能性_②ルールの最適化

CPQで仕様を確定するルールには、頻繁な更新が求められます。このルール更新作業も要求に対して正確な仕様・見積もりを出すために重要です。一方で、人間の時間をかけた判断が必要な作業であり、慎重さが求められます。

AIを利用すれば、失注・受注データなどから変更が必要な仕様確定ルールを自動的に導き出すことができます。ルールの最適化は、市場の動向に対応するためにも重要です。AIをCPQに活用することで、市場対応の迅速性が増すと考えられます。

顧客と工場を繋げる設計モデルの獲得が成功のカギ

CPQの例を出すまでもなく、顧客要求から機能的な仕様、構造仕様、工程仕様にデータを変換させる事で初めて、その工程仕様に基づき「スマートファクトリー」は稼働します。つまり顧客と工場を繋げるためには、顧客の要求モデルと工場の製造モデルとの整合性を保つ「設計モデル」を獲得するための設計改革をする事が成功のキモとなります。

AIに関しても、単に工場内に閉じた業務効率化やスマート化のツールとして考えるだけでなく、ニーズデータというデータ資産を獲得し、それを分析・解析した結果を、工場のみならず、顧客接点へフィードバックする事で需要創出を喚起する使い方をすべきです。

国内製造業が対応を急がれているマスカスタマイゼーションにおいて、AIは大きな可能性を秘めています。その可能性は、単なる業務効率化やコスト削減にとどまりません。とりわけ、CPQをAIによって最適化・迅速化していくことは重要です。マスカスタマイゼーションを実施する際は、AIの活用を視野に入れてはいかがでしょうか。

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