ジェネレーティブデザインで考える設計力強化

2020.10.19

こんにちは。YDCのサイです。

DX_colum_20201019.jpg

「開発設計領域においてDXを促進するソリューションは何か?」と問われると、CADやCAEをイメージする方が多いと思います。設計者が設計業務の中で一番使う頻度の高いソフトウェアでもある事から、デジタル技術を活用して開発設計業務を変革するソリューションとして一番イメージしやすいのだと思います。

その様なCAD業界で注目されている技術的トレンドの一つとして「ジェネレーティブデザイン」が挙げられます。展示会やweb上でのプロモーションを拝見しても多くのCADベンダーがこの機能を自社のソリューションに組み込む事を競っている様に見えます。

今回のコラムでは、DX時代の新たな設計手法である「ジェネレーティブデザイン」と、それに適した製造法と言われる「アディクティブマニュファクチャリング(AM)」に関して解説を試みると共に、DX時代の開発設計領域の課題について論じてみたいと思います。

もくじ

  1. 1.ジェネレーティブデザインとは
  2. 2.ジェネレーティブデザイン活用イメージ
  3. 3.アディティブマニュファクチャリング
  4. 4.設計力強化とは設計プロセス改革である
  5. 5.まとめ

ジェネレーティブデザインとは

「ジェネレーティブデザイン」とは何か、近年のCADベンダーのトレンドから受けるイメージでCADに実装される機能と捉えてしまうと、それはあまりにも狭義的な理解です。

様々な方が「ジェネレーティブデザイン」についての説明を試みていますが、その中からいくつか上手く説明されているなというものをご紹介します。


目標主体の設計手法
オートデスク株式会社.「ジェネレーティブデザインの本質に迫る」
http://bim-design.com/catalog/pdf/AEC_Generative_Design_eBook.pdf

ジェネレーティブデザインは、従来の設計プロセスでは不可能なバリエーションを探索する、アルゴリズムを使用した設計プロセスです。
Matthew McKnight.「Generative Design: What it is? How is it Being Used? Why it’s a Game Changer!」
https://knepublishing.com/index.php/KnE-Engineering/article/view/612/1903

上記の様に、「ジェネレーティブデザイン」とは、アルゴリズムを活用した新たな設計プロセスを示す概念であり、設計目標を入力し、そこからルールやアルゴリズムに従って生成される設計アウトプットを評価する事で設計最適解を導きだす設計プロセスであると説明されています。

従来も設計領域ではコンピュータを利用してきています。しかし作図作業を紙からCADに変えるという使い方ならば、その作図作業が効率的に出来るかもしれませんが、本質的な設計プロセスが変わったとは言えません。「目標主体の設計手法」と呼ばれるジェネレーティブデザインの場合、従来とは根本的に設計プロセスを変える事に繋がるため、それが設計思考を変えていき今までと違うイノベーションが起きる新たな可能性を秘めています。その様な期待からジェネレーティブデザインの活用は、アート、建築、更には機械工業設計分野にも広がってきています。

ジェネレーティブデザイン活用イメージ

「ジェネレーティブデザイン」のイメージを掴みやすいよう、Webにある事例やプロモーションを参考に活用の具体例を説明してみます。

DX_colum_20201019.jpg

現在、オフィスビルの内装が計画されていたとします。クライアントからは「一年を通して十分な光が入るようなオフィスにしてほしい」という要求がありました。

リクエストに応えるために、通常なら設計士がその様なクライアントの要求から、間取りや窓の向き、デスクの配置など、さまざまな要素をその設計士なりの設計プロセスにそって検討を進めていきます。そして数日経った後で、2~3案程度の設計アウトプットが作られます。

一方、ジェネレーティブデザインの場合、ダイレクトに設計アウトプット導くのではなく、クライアントからの要求に対する設計案を、コンピュータを用いてほんの数時間で複数生成します。その様なアウトプットを評価し、アウトプットする過程のパラメータやルールを微調整してまた設計案を生成して評価します。

つまり、ジェネレーティブデザインでは設計案そのものをすぐ考え始めるのではなく、いかにクライアントの要求を抽象化(モデル化)し、コンピュータが生成するための規則やアルゴリズムに落とすか、つまりコンピュータが計算可能な設計プロセスや設計ルールに落とすかから始まり、そこが重要となります。

従って、ジェネレーティブデザインを設計に組み入れる事は、設計としての役割が設計アウトプットを生み出すことから、設計プロセスを生み出しマネジメントすることに代わっていくことになります。そして、その変化が設計知識、技術などナレッジの再利用を促進し、組織的な設計力強化に繋がります。

例えば、設計プロセスを確立した後、コンピュータが得意な「繰り返し」検証することで、この設計プロセスを進化させることが可能です。また、そのプロセスに「ランダム」を組み込むことにより、設計アウトプットに多様性や想定外の結果を創造することも出来る。例えば設計案のなかには、設計士が思いつかなかったようなアイデアも含まれる場合もあります。そして、その検討の中に、後工程の設計検討要素、例えば原価や生産条件をフロントローディングして組み込むなど拡張していき設計全体のQCD向上にも繋げる事ができます。

カスタマイズに最適な技術

ジェネレーティブデザインのブームが従来の設計シミュレーション活用と違いを見せているのは、顧客のニーズから設計案を創出する構想フェーズ、つまり機能や構造のみならず、要求設計の様な意味的空間にも適用範囲を広げていることと思います。つまり、設計と顧客との要求設計段階の対話にも使えるシミュレーションである事です。

例えば、要求設計段階で複数の設計案を短い時間で提示できるようになれば、多種多様な要望にも応えるカスタマイズビジネスプロセスにこの技術が適用できます。

実際に、B2Bビジネスでカスタマイズが重要な産業用機械にもジェネレーティブデザインの波が押し寄せてきています。また、上記で例にした建築業界や、自動車、そしてより広い産業にも利用が進んでいます。例えば実機試験による評価が難しい飛行機や人工衛星などでは以前よりシミュレーションが重要であり多目的多変数最適化の設計シミュレーション活用を以前から取り組んでいるため、ジェネレーティブデザインを強化していくことが想定されます。

アディティブマニュファクチャリング

ジェネレーティブデザインの形状設計による活用を後押しした技術として、アディクティブマニュファクチャリング(AM)があります。例えば「3Dプリンターの産業利用」がそれにあたります。

産業用途の3Dプリンターは、医療分野や宇宙航空分野が主な活躍の場でした。部品単価の高い業界でしか活用が広まっていなかったのです。しかし近年になり、自動車や鉄道に加え、一般消費者向け製品にも活用が広まってきています。とくに、顧客のニーズに寄り添った製品開発における施策ロットの場面で大きな役割を果たすでしょう。

製品の付加価値を高める&小ロットの低価格・短納期化

アディクティブマニュファクチャリング(AM)を用いることで、これまで設計はできても製造が困難だった部品等が実現できるようになります。こうした部品の採用は、製品に新たな付加価値を与えるでしょう。

少量生産品の低コスト・短納期化です。型不要、単体で造形可能という特徴を生かせば、カスタマイズ対応として個別最適化された製品を提供できる産業が、今まで販売単価が高い産業に絞られていたのが、より広い産業で実現できることに繋がります。

設計力強化とは設計プロセス改革である

今回はジェネレーティブデザインとアディクティブマニュファクチャリング(AM)について解説してきましたが、この様な最新技術の動向を単なるCAD機能や一つの製造技術が出たとだけで捉えると本質を間違います。

DX_colum3_20201019.jpg

例えば、ジェネレーティブデザインとは新しい設計プロセスのことであり、その意味合いは設計結果を生み出す事から設計プロセスを定義しマネジメントすることに設計者の役割が少しシフトすることが本質であり、今後、設計ナレッジを再利用する形で資産化することが重要であることを伝えました。

そして、そのような設計プロセス改革は、企画構想フェーズ、更には顧客との共創へと設計プロセス変革の領域を広げてきています。そしてそれを加速させるのが、その新しい設計プロセスに適したバックエンド改革であり、アディクティブマニュファクチャリングなどの新技術により、広い産業全体としての設計プロセス改革が一気に加速する可能性もあるのです。

重要なことは、狭い領域での設計改善ばかりではなく、お客様の要求から生産、そしてお客様が製品を利用する大きな流れ全体で、どのような付加価値を創造するか、設計情報の流れを良くするかという視点に基づき設計プロセス改革を進めることにあります。

しかし、設計者が普段の設計業務をしている中で、その様に意識の壁を越えてとらえることは難しく、企業の経営層やマネジメント層がその様な設計プロセス改革を推進する事が重要です。

まとめ

製造業の大きな変革潮流として「マスカスタマイゼーション」という流れがあります。これは今までの「マスプロダクション(大量生産)」からの変革ですが、重要なことは要求設計のような設計プロセスの上流部分がお客様のものになるという事です。

その様な大きな変革に向かい、自社の設計プロセスを中心としたビジネスプロセスをどの様に変えていくのか。そのグランドデザインを描く中で、本日ご紹介した「ジェネレーティブデザイン」などを位置付けていくことが重要です。単なるCAD機能を同じ設計業務の中で使うだけでは、企業として大きな成果は見込めないでしょう。

このような、グランドデザインは設計プロセス改革をデザインすることができる「設計視点の企業変革」方法論を用いる必要があります。それは業務プロセスを可視化・分析するのではなく、設計情報の流れを分析する方法論です。もし、そのような設計視点の改革方法論にご興味ある方は、当社にお問い合わせいただけたらと思います。

mas sol_20200422.png
  • LINE
  • Mail