どちらを重視する?付加価値向上と業務効率化

2020.05.25

こんにちは。YDCのサイです。

「生産性を向上させること」の重要性が業界を問わず叫ばれるようになりました。それを実現するための施策は、大きく業務効率化と付加価値向上のどちらかに分類されます。そして明らかな事は、このどちらを指向するかで生産性向上の成果が変わるという事です。こちらでは、労働生産性の定義や生産性向上のために取り組むべきことについてお話しします。

もくじ

  1. 1.生産性とは
  2. 2.労働生産性と2つの生産性向上施策
  3. 3.生産性向上に必要なICT活用
  4. 4.労働生産性に大きな影響を与えるのは付加価値
  5. 5.日本製造業は業務効率化・コスト削減重視
  6. 6.求められるマスカスタマイゼーション改革

生産性とは

内閣府が打ち出している「働き方改革」では、国際的に見ると低下している日本の「生産性」の向上が急務とされています。一方で、この「生産性」についてしっかりと理解している方は少ないかもしれません。「生産性」という言葉はビジネスでも頻繁に用いられていますが、定義については曖昧です。まずは、「生産性」の定義についておさらいしておきましょう。

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先ず、「生産」とは、財やサービス、あるいは付加価値を産み出す諸活動のことをいいます。この「生産」の効率の事を「生産性」といいます。

この様な言葉の意味合いから、製造業においては、「生産性向上」という言葉でイメージするのが、「昨日まで、一日一人で一つの製品を生産していたのを、一日二つの製品を生産できる様になる」です。つまり、同じ人が2倍働けるようになる「業務効率化」、もしくはロボットが代わりに働く「自動化」によって今までの業務量もしくは処理スピードが倍になるという様なイメージとして捉えている人が非常に多いのではないでしょうか。

しかし、「生産性」をこの様に捉えているならば、これからの時代は危険であると言わざるを得ません。その様な危ない誤解を解くためにも、「生産性」の定義の正確な理解が重要になります。

「生産」とは上記の様に、「財やサービス、あるいは付加価値を産み出す諸活動のこと」です。そして「生産」をするためには、その活動をする「ヒト」や材料/設備などの「モノ」、そしてその活動をするための資金つまり「カネ」の様な資源が必要となります。

この「資源」を「投入(Input)」して産み出された財やサービス、あるいは付加価値を「算出(Output)」したとする場合、生産性を表す式は、「生産性=算出(Output)/投入(Input)」ということになります。

つまり、生産性とは、「財やサービス、あるいは付加価値」を産み出すあたり、投入した「資源」がどれだけ効果的に使われたかということであって、それを割合で示したものが生産性なのです。

労働生産性と2つの生産性向上施策

「生産性」は、投入(Input)する資源について、どの資源に着目するかで様々な種類がありますが、上述した内閣府が提唱する「生産性向上」などで使われている事もあり、最もよく用いられるのが労働の視点からみた生産性、すなわち労働生産性です。式としては以下となります。

労働生産性=労働によって生み出された付加価値/労働投入量

ということです。分子の付加価値は「付加価値額」とし金額で表す事が多く、また、労働投入量として代表的な要素は従業員数や時間あたりの労働量などです。

上述した式を見ればわかるように、労働生産性を向上させるためには、原則として分子である成果を向上させるか、分母である労働投入量を減らすしかありません。上述した、「生産性向上」≒「業務効率化」というイメージを持つと、同じ付加価値額を産み出すために必要な“分子を下げる施策に偏る”事が非常に危ないという事を理解して貰えると思います。

生産性向上に必要なICT活用

日本製造業において、今重要な事は「生産性」が同じまま、労働投入量を増やして規模を拡大する事ではありません。「生産性」を向上する。つまり「労働投入量(分母)と付加価値額(分子)の比率を変える」事です。

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その為に、経営層がやるべき最も重要な事は、生産性を向上する「技術」に投資をし、その「技術」をビジネスに組み込むことでイノベーションを想起し、高付加価値なビジネスに変える事です。

この「技術」の中で、どの企業にも必ず重要となり、かつ現在飛躍的に技術革新が起きているものが、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)です。例として、EC、Web広告、SNS、業務システム、クラウドサービス、社内外ネットワーク、RPAなどが挙げられます。

グローバルで見ると、多くの企業がこれら新しいICTというテクノロジーを活用した新たなビジネスモデルやサービスを実現し、多くの企業が自動化や省人化により今までにないビジネス効率化を可能にしています。また、ICTテクノロジーも、ICTベンダーによる競争が激化し、年々新たな技術が産み出され、技術レベルも飛躍的に向上しています。

もはや、生産性向上のためにICTの活用は必須であるにも関わらず、日本はどちらかといえばICTの利用に関して後進国です。ICTを活用した全産業の革新、つまり第四次産業革命(industry4.0)の時代で生き残るためにも、生産性向上を目的としたICTの活用は、日本製造業全体の急を要する重要課題です。

労働生産性に大きな影響を与えるのは付加価値

労働生産性を上げる施策方向性として、分母である「労働投入量」を下げる方法と、分子である「付加価値」を上げる方法の2つ施策方向性があるとご紹介しました。後者の「付加価値」を上げる施策には、「既存製品・サービスの高付加価値化」と「新規製品・サービスの展開」があります。

ここで、ICTの活用について重要な事は、「労働投入量」を下げるのと、「付加価値」を上げるのと、どちらの施策方向性を指向するかで、大きく投資対効果が変わるという事です。総務省が平成30年の行った調査では、業務効率化・省力化にICTを利用している企業よりも、付加価値額増加のため「攻め」のICT利用を行っている企業のほうが大きな労働生産性向上に成功していることがわかりました。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd132400.html

効果としては、業務効率化を目的としたICT投資に比べ、付加価値増を目的としたICT増は2倍の投資対効果を見込めるというのが調査によって纏められています。限られた経営資源を割り振り、ICT投資をする際に重要な事は、その投資対効果の最大化です。従って、「労働投入量」を下げるのと、「付加価値」を上げるのと、どちらの施策方向性を指向するかは明らかだと思います。

日本製造業は業務効率化・コスト削減重視

前述したとおり、ICT投資の労働生産性への貢献度は付加価値額のほうが大きい。そうしたなか、米企業の多くが付加価値額増加のためにICTを利用しています。

DX_202005_3.jpg対して、日本では労働投入量を下げる施策である、業務効率化・コスト削減のためにICTを利用している企業が圧倒的多数のようです。とりわけ、製造業ではそうした企業が目立ちます。

もちろん、新たな価値創造や新製品・サービス開発のためにはリソースが必要です。業務負荷を軽減・最適化してそのリソースを産むためにICTを利用するのは悪いことではありません。しかし、こうした効率化が完了した時点で労働生産性の向上施策が終わったと思ってしまう企業が多いのです。こうした状況が、グローバル市場での競争力不足につながっているとも考えられます。

求められるマスカスタマイゼーション改革

グローバル市場に立ち向かっていこうとしている国内製造業にはマスカスタマイゼーションへの対応が急がれています。これはコモディティ化への対抗施策であり、上述した付加価値増加を実現するための重要なテーマです。当然ながら、マスカスタマイゼーションの実現にもICTが必須といえます。

「ICTは業務効率化・コスト削減のためのツール」という見方が、業界を問わず日本産業のトレンドではないでしょうか。しかし、労働生産性の優位性を取り戻すためには、効率化だけではなく提供付加価値増を目的としたマスカスタマイゼーション実現が必要です。

日本製造業の喫緊の課題は「生産性向上」です。「生産性向上」にはそれに大きく寄与する「技術」へ投資する事です。第4次産業革命で重要な技術の一つであるICTへ投資し、ビジネスに組み込むことで大きな「生産性向上」が実現可能です。

そして、ICT投資の「生産性向上」効果を最大化するため、「提供する付加価値増」を目的とした「攻め」のICT投資が、他社との競争優位性を産むのです。

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