製造業が直面しているリードタイム課題の本質的変化

2020.04.17

こんにちは。YDCのサイです。

リードタイムとは、多くの産業で使われる言葉ですが、主に製造業で良く使われる言葉です。製造業ではQCD向上は基本的命題であり、このQCDをマネジメントする上で、重要な指標がリードタイムです。

リードタイムという指標を最適化することは、製造業においては今更説明するまでもなく重要であることは認識されておりますが、しかし、ビジネス環境変化の激しい昨今、このリードタイム課題の本質を捉えなおす事は、特に製造業の経営層、マネジメント層にとって非常に重要だと考えております。

何故ならば、リードタイム課題といっても時代の変化により本質的な意味合いが大きく変わってきているからです。そして、その変化に従い企業として取るべき打ち手も大きく変化してきているのです。本コラムではその様な製造業が直面しているリードタイム課題の本質的変化について論じたいと思います。

もくじ

  1. 1.リードタイム短縮が戦略的自由度を産む
  2. 2.リードタイム課題の本質はTTM(タイムトゥーマーケット)
  3. 3.生産リードタイムから開発リードタイムへ
  4. 4.グローバル企業としてのリードタイム課題
  5. 5.顧客プロセス変革がこれからの製造業課題

リードタイム短縮が戦略的自由度を産む

先ず、QCDのDである納期とは、受注した商品をお客様に収める期日の事を言います。お客様が何か商品が欲しいと感じた時に、その商品がいつお客様のもとに届くかは、お客様にとって非常に重要な購買検討要素の一つです。同じ観点で、お客様にとってのリードタイムとは、発注した日から商品を手に取って使い始めるまでにどれ位の日数がかかるかという事と捉えます。

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販売店としてお客様にすぐ提供するには、事前にどれ位販売できるかを予測し購入しておく、つまり在庫を持つことになります。しかし、在庫を持つという事は手元の資金を使う事になりキャッシュが不足する恐れがあります。このキャッシュを維持する分、販売価格が上乗せされる事になります。

販売店としては、在庫を少なくすることは経営管理上重要な指標であるため、供給者である製造業に発注したらすぐ納品して貰える事を要求します。製造業としても当然在庫はコストとなるため、最小限の在庫で対応できる事が重要となります。しかし、納期が延びれば販売機会を逸するのです。

製造業として、この納期と在庫のバランスを取るうえで重要な事は自分たちの仕事に必要な“所要時間”がどの様に影響するかを理解する事です。それら所要時間の事を同じくリードタイムと表現します。調達リードタイム、製造リードタイムなどです。

製造リードタイムが、お客様として許容してくれる納期と比べて十分短ければ、お客様から注文が入ってから製造することで間に合います。従って、最終製品で在庫を持つ必要がなく、材料として在庫を持っていればビジネスは維持できるのです。そして調達先の協力会社が生産改善をすることで調達リードタイムも十分短ければ、材料の在庫も削減する事ができます。

つまり、これら製造業側で行っているそれぞれのリードタイムが短ければ短いほど、多少品質が劣っても、お客様に提示する納期の短縮、販売価格の低下など、競合との戦いに置いて取りうる戦略の自由度が高まります。従って、製造業の各部門は自分たちの業務にかかる時間を秒単位で測定し、改善するという活動を日々行っているのです。

高度成長期の時代に、この様に継続的にQCD向上に取り組み、日々学習しつづけ、課題を解決してきた組織力をもつ日本の製造業は、その効果がダイレクトに経営指標の改善に結びつき、企業の成長を後押ししてきました。その勢いをもってグローバル市場に参入し、一時期はジャパン・アズ・ナンバーワンともてはやされた一因と考えられます。

しかし、時代は変革し競争ルールが大きく変わりつつあります。一言でいうと “モノからコトへ”の変化が、リードタイムの本質を変えました。つまり商品の提供するリードタイムではなく、価値提供のリードタイムを明らかにお客様はシフトしております。次項から製造業視点でその変化の経緯を少し解説したいと思います。

リードタイム課題の本質はTTM(タイムトゥーマーケット)

先述したとおり高度成長期の時代には、いかに早く、多くの商品を供給できるかが重要でした。QCDのDの観点でいうと、市場をいち早く察知し、その市場の需要にこたえる商品供給をどこよりも早く対応することが重要となります。

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昨今では、新型コロナウィルスの影響で市場からマスクが品薄の状態になっております。この様に明らかに需要があると分かった場合に、素材調達、生産設備調達をいち早く行い、人員リソースを確保し、生産を開始し、市場にいきわたらせる商流に自社商品をどこよりも多く確保できるかが重要となります。

ここでそれぞれのリードタイムが他社よりも圧倒的に短い場合、先ずは市場や他社の動向を観察し、明らかに動いてから着手しても、結果他社よりも先んじてより多くの市場を制圧する事が可能なのです。つまり戦略の自由度が他社よりも大きい状態にあります。逆に他社より圧倒的にリードタイムが長い場合、先んじて市場を把握し準備を始めたとしても、後発した競合に市場シェアを多く奪われることになり、結果投資を回収する事ができません。

つまり、リードタイム短縮とは、間接的に原価削減に繋がる施策でありますが、経営的な本質はTTM(タイムトゥーマーケット)の短縮なのです。これを以下に最適化し投資に対する回収を最大化できるかが製造業のマネジメントで非常に重要なのです。

生産リードタイムから開発リードタイムへ

製造業のリードタイムは「開発リードタイム」「調達リードタイム」「製造リードタイム」「配送リードタイム」などに分けられます。このなかでも、製品開発の計画・立案を行う開発リードタイムはリードタイム全体で最も川上にある部分です。

日本では高度成長の時代を経て、多くの市場が成熟してきました。つまり、一つの市場に複数の競合がひしめきあい競争する状況です。その様な中で市場に商品があることが当たり前の様になり、いわゆる“コモディティ化”と呼ばれる状況になります。

これに対して、常に新商品を市場に対して打ち出す事で、他社に対する“差別化”と“商品価格の低下”を阻止しようとしました。この際に製造業としてマネジメントすべき重要な事は、“製品ライフサイクル”をちゃんとマネジメントする事となります。初期の開発や生産立ち上げの投資から、生産し、販売終了における一連のライフサイクルを通して、投資に対する回収を最大化すること、またキャッシュフローを改善する事が重要となります。その中でリードタイムという観点では“製品ライフサイクル”の最も川上に位置する“開発リードタイム”が何より重要となったのです。

市場にいち早く最新機能を備えた商品を供給することで、その業界をウォッチしているアーリーカスタマーや関連メディアに取り上げてもらい、市場でのリーダー企業としての認知度を獲得できます。そうすると市場のロードマップを主導する強力な権限を獲得し、計画的にパートナー企業含めた企業群としてマネジメント力が向上するのです。

国内でリーダー企業となった多くの製造業は、このビジネスを海外市場へと展開することで更なる成長を望みました。そして多くの製造業は苦労しながらもグローバル市場でも成功してきています。それを支えた礎は、生産リードタイムや開発リードタイムを最適化してきた製造業の組織的な現場力に他なりません。

時代は変われども、製造業としての基礎体力ともいえるQCDを向上する能力、特にリードタイムという観点における強みは非常に重要です。しかし、それに胡坐をかいていては強かなグローバル市場の競合たちに対抗する事ができないのも事実です。

グローバル企業としてのリードタイム課題

日本製造業の多くは、主戦場をグローバル市場にシフトしてきております。その様な企業にとってリードタイムの課題もより高度化してきております。市場環境も商習慣も様々、お客様が求める要求も様々な多様な市場に対して、コストダウンのためには大量生産を行うのが一般的です。

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一方で、幅広いニーズに対応するためには個別受注による「カスタマイズ」も重要視されています。とりわけグローバル市場では幅広いニーズが予想され、既存製品の大量生産だけでは競争力に欠けるケースも少なくありません。

特注の場合に問題となるのが、仕様確定や設計の手間です。さらに、仕様確定に時間がかかれば顧客への見積もり提示も遅れてしまいます。その為の備えをする事で結果的に開発リードタイムが長期化してしまうこともあります。

とりわけ製造業では、自社のプロダクトやビジネスモデルに「カスタマイズ」という武器を仕込む際に、この個別受注生産ならではのリードタイム長期化問題に直面している企業が少なくありません。対応力を上げるために特注対応を行うと、リードタイムを悪化し販売機会を逸したり、ビジネス効率を下げてしまうという、悩ましい問題です。

顧客プロセス変革がこれからの製造業課題

前述の様な問題への打ち手として、大量生産のメリット享受しながら、同時に受注生産にも対応し細かなニーズを取りこぼさない「マスカスタマイゼーション」というコンセプトが産まれました。

特にグローバル市場に切り込んでいこうとしている製造業では、マスカスタマイゼーションへの対応が重視されています。つまり多様なお客様の要求に応えつつ、いかに工数をかけず対応し、リードタイムを短縮するなどビジネス効率を両立させるかがポイントです。

その改革方向性を示す言葉が「モノからコトへ」というキーワードです。プロダクトアウト的な発想で、製品を供給するリードタイムという視点から、顧客プロセス全体を通して、価値を適切なタイミングでいかに提供するかという事に、マネジメントの主軸を切り替えていかなければなりません。

マスカスタマイゼーションの対応は、従来の様な自社のモノや人の動きである内部プロセスに主眼を置いたQCD改善活動だけでは実現できません。重要なのは顧客プロセスの変革に主眼を置くデジタルトランスフォーメーションが必要となります。

株式会社ワイ・ディ・シーは、製造業のデジタルトランスフォーメーションを、ビジネスプロセス、システム、プロダクトデータなど多層に跨る領域全体を改革するコンサルティングサービスを提供しております。マスカスタマイゼーション実現のための仕組みを作りたい企業様や、自社のデジタルトランスフォーメーションをどの様に実現すべきか悩んでいる企業様もぜひご相談ください。

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