グローバル需要に対応するためにマスカスタマイゼーションの実現を

2020.02.17

こんにちは。YDCのサイです。

グローバル需要を視野に入れている企業の間で「マスカスタマイゼーション」という取り組みの重要性が叫ばれるようになりました。本コラムでは、「マスカスタマイゼーション」の概要やメリット、実現するためのソリューションなどについてお伝えします。

もくじ

  1. 1.マスカスタマイゼーションとは
  2. 2.マスカスタマイゼーションが求められている背景
  3. 3.マスカスタマイゼーションによるメリット
  4. 4.マスカスタマイゼーションの課題
  5. 5.マスカスタマイゼーションを実現するために必要なもの

マスカスタマイゼーションとは

「マスカスタマイゼーション」とは、「大量生産」を意味する「マスプロダクション」と「要求に応じた製作や作り直し」や「特注」などを意味する「カスタマイゼーション」を組み合わせたコンセプトです。つまりは、大量生産に近い生産性を保ちつつ、顧客ごとの個別要求に対応した付加価値の高い商品やサービスを提供する取り組みを意味します。生産コストを下げるための大量生産と顧客満足度を上げる受注生産を両立する概念であり、ポスト大量生産、大量消費時代における新たなモノづくりの形と考えられています。

日本では1990年代にマスカスタマイゼーションを取り上げた海外書籍の翻訳本が発刊され、この概念が広く認知されました。そして現在では、製造業をはじめとして多くの産業界で重視されています。

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ただ、日本では大量生産と顧客毎の個別な要求に応えて生産する受注生産の両方のメリットを享受するための「新たな生産モデル」という認識として製造業を中心に広がりました。その中で「多品種少量生産」もしくは「多品種大量生産」という類似の概念が、マスカスタマイゼーションの対訳とされたのも特徴的であると言えます。

例として挙げれば、「多品目を効率よく製造し幅広い顧客ニーズに応える」という取り組みは多くの企業で行われています。しかし、受注の都度生産計画を立て、顧客の要求に応えるプロセスでは生産性を上げづらいのが実情です。この問題は、マンパワーによる受注・設計プロセスの限界といえるかもしれません。

それに対し多くの製造業では、設計と生産を請け負う工業側が中心となり、その問題解決を試みております。設計においては多くのバリエーションをもつ複数の製品を内部の設計としては共通化・標準化を進める。そして生産工程もライン生産からセル生産など多くのバリエーションへの対応力を上げる事を目指したのです。
この様に多品種に対しての対応力を上げる施策は非常に難易度の高いものでありますが、多くの製造業はこの難題に時間を掛けて取組み、一定の効果を出す事に成功しています。

しかし、その様な施策をしたにも関わらず、日本の製造業はグローバルで見ると相対的に競争力を低下させていきます。その理由は、日本の製造業はマスカスタマイゼーションの本質を見誤った事にあるのではと考えております。マスカスタマイゼーションの本質は、顧客の多様なニーズに応え、提供できる付加価値を上げる事であり、製品仕様のバリエーションを増やす事とは厳密には同じではありません。顧客に選択肢を与えすぎると顧客満足度が低下するという「選択肢のパラドクス」も良く知られています。

それでは、何故顧客にカスタムをさせる必要があるのか、それは顧客に自ら設計をして貰い、顧客に適合した世界にたった一つの商品・サービスである事であり、その価値を実感して貰うためです。その為に重要な事は工場側の柔軟性や対応力のみではありません。より重要な事は顧客に商品やサービスの要求設計を渡す事、つまり顧客接点の変革、つまりは「販売モデル側の変革」にあるのです。それを私達はフロントエンドイノベーションと呼んでおります。

マスカマイゼーションの実現方法は複数のパターンがあります。その中でも日本製造業は、工業に閉じて変革できるバックエンドの対応力向上に偏っていることが多いのではないでしょうか。しかし、マスカスタマイゼーションが求められている背景は、現在の日本製造業に必要なマスカスタマイゼーション改革とは顧客接点改革(フロントイノベーション)にあります。

マスカスタマイゼーションが求められている背景

現在、製造業をはじめ多くの業界がマスカスタマイゼーションの導入に乗り出しています。この背景にはどのような理由があるのでしょうか? 代表的な理由として、以下のようなものが挙げられます。

・顧客ニーズの多様化

現代は情報が容易に手に入るようになり、顧客にとってはニーズに合った製品を比較・検討しやすい時代といえるでしょう。それに伴い、顧客のニーズも多様化しました。一方、企業が競争力を持つためにはそうしたニーズへの対応力をつけなければならないということになります。

グローバル市場を意識する場合、さらに強大な対応力が必要です。海外の競合と相対するためには、大量生産によるコストダウンだけではなく、各国の少数ニーズに対する販売機会も能動的に獲得していかなければならないのが現状です。

・コモディティ化による市場製品価値の低下

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どれだけ画期的な製品を打ち出したとしても、いずれは模倣が起こり、価値が低下します。さらに、とりわけ大きな規模の市場で製品を供給する場合、供給過多も起こりがちです。こうしたコモディティ化による製品価値の低下は、製造業だけに限らず多くの業界が直面しています。

コモディティ化が起こるということは、顧客が商品に付加価値を感じていないということになります。この場合、高い確率で低価格競争が起こるため利益への悪影響は少なくありません。市場で競争していくためには、価格以外の価値を顧客へと提供する必要があります。

・受注生産のリードタイムを短縮する必要性

細かな要求に応える受注生産は、企業が顧客に提供できる価値のひとつです。しかし、工数の問題からリソースを圧迫せずに受注生産を行うのは容易ではありま

せん。結果として、見積書提出の遅れや納品の遅れなど、リードタイムの増加が起きてしまいます。

リードタイムは納期に密接に関係するため、顧客が発注する企業を選ぶ際に基準となる重要な要素のひとつです。リードタイムによって販売機会を逃してしまうケースも考えられるため、効率的に受注生産に対応できるシステムの確立が求められています。

マスカスタマイゼーションによるメリット

マスカスタマイゼーションを高次元で実現できれば、大量生産のメリット・受注生産のメリットの双方を享受できます。それぞれのメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

■大量生産のメリット

・生産コストの削減

システム化、自動化によって大量生産を行うため、1製品あたりの生産コストを削減できます。これは、大量生産による最大のメリットです。

・納品までのリードタイム短縮

一度設計してしまえば通常、当分は仕様変更を行う必要はありません。1つの設計で大量製品するため、結果的に納品までのリードタイムが短縮されます。

・大量仕入れによる原価の圧縮

資材を購入して生産を行う場合、大量に購入すればボリュームディスカウントなどが受けられます。このことにより、製品1つあたりの原価が圧縮されます。

■受注生産のメリット

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・顧客の幅広い要望に対応できる

多様化する顧客要望にどれだけ対応できるかは、規模が大きい市場で競争していくために重要です。

・ソリューションビジネスを展開できる

顧客の漠然とした悩みや要望に対して、オーダーメイドの製品でソリューションビジネスを提案していくこともできます。こうした価値の付加は、コモディティ化した市場で有効な取り組みです。

・売れ残り商品在庫コストが無くなる

受注生産では、注文してから生産するため、材料や中間品はともかく、最終商品の在庫は基本的に持つ必要がありません。従って販売計画の予測ミスや景気変動による売れ残り商品在庫を抱える事は基本的に無く、発注後にオーダーがキャンセルされない限りは発生しません。

マスカスタマイゼーションの課題

本来、大量生産と受注生産はまったく逆のコンセプトです。受注生産を重視すれば大量生産のメリットが失われます。また、逆もしかりです。そういった意味では、「完璧なマスカスタマイゼーション」は実現できないともいわれています。

多くの企業がマスカスタマイゼーションにおいて注力しているのは、双方を両立し、バランスをとることです。リソースの問題からマンパワーだけで実施するのは難しく、適したソリューションの活用が求められています。

マスカスタマイゼーションを実現するために必要なもの

上述したように、マスカスタマイゼーションの実現は簡単なことではありません。キーソリューションとなるのが、顧客の要望を効率的に製品仕様へと落とし込める仕様の検討とITツールです。また、納品までのプロセス全体を効率化するためには、営業、開発、設計のシームレスな連携などのプロセス改革も求められます。

とりわけグローバル受注を拡大するためには、マスカスタマイゼーションは極めて重要なコンセプトです。同時に、マスカスタマイゼーションのプロセスによる人手や手間についても対策を講じる必要があります。要求から自律的に製品仕様を確定するITツールの導入だけではなく、部署・部門をまたいだ体制を確立して完成度の高いマスカスタマイゼーション改革を実現していただくことをおすすめします。

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