熟練者の技術伝承を成功させるポイント 解決策編

共動創発事業本部 八重島

設計開発部門における技術伝承は、製造業においては特に大きな課題となっています。

これまで技術伝承に向けて様々な取り組みやチャレンジが行われてきましたが、技術伝承をうまく成功させた企業もいれば、失敗してしまった企業もでてきています。そこ明暗を分けたポイントはどのあたりにあるのでしょうか。

今回は、熟練者の技術伝承を成功させるポイントについてお話ししたいと思います。

目次

  • 【Q4】注意して進めるべきポイントとは?
  • 【Q5】技術伝承はすべて自力でできるか?
  • 【Q6】専門家を選ぶ際のポイントとは?

【Q4】注意して進めるポイントとは?

  • 1.「技術」という見えざる資産を統合し、組織として共有するために「設計プロセスの可視化・共通化」から始める

「技術」という見えざる資産を組織的に活用、再利用するためには、「技術」を構造化した情報として整備する必要あります。そのためにも、「技術資産」を受けるための全体像としての枠組みを定義する事が重要となります。

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その全体像は、組織構造、技術体系、製品体系、業務構造という従来からマネジメントしているものが重要なのはもちろんのこと、それよりも粒度を細かくする必要があります。つまりは、設計者が設計を進める上での「設計プロセス(思考プロセス)」を全体像の枠組みとして定義すべきです。そして設計プロセスの構造に、熟練者のもつ一番重要な知見である「設計思想」を組み込み、それを組織の資産にする必要があります。

この「設計プロセス」に対して、各部署の成果、例えば図面や技術仕様書、さらには設計根拠や設計基準を紐づけて蓄積していくことで、今までバラバラに管理していた様々な情報が、洗練された「熟練者の設計思想」を元に統合されることに繋がります。この「技術資産」を統合するための「設計プロセス」のことを我々は、設計を抽象化(モデル化)したものということで「デザインモデル」と呼んでおります。

  • 2.「設計プロセス」の可視化や、それの活用、メンテナンスを「技術リーダー候補」ができるようにする

「技術資産」は蓄積するだけでは効果は出ず、活用することで初めて効果が出ます。「技術資産」を組織的に活用するために、それをけん引する役割を担うのは、多くの技術要素を統合し、ひとつの商品に統合する役割を担う「技術リーダー」と呼ばれる人財です。つまり、組織的な「技術リテラシー」を向上し、技術資産の活用を促進する中で、「熟練者の技術伝承」を実現させられるかは、次世代を担う「技術リーダー候補」に掛かっています。

ただし、彼らは忙しい中で従来通りの開発業務や手法を駆使しビジネスを回しています。急に新たな手法に切り替えるのではなく、彼らの「技術リテラシー」を向上させるための教育的な取り組みみを組み込むことも重要になります。

  • 3.小さな効果を創出しながら、徐々に理解者を増やして活動の範囲を広げていく

組織の技術を活用する力「技術リテラシー」は急には上りません。技術を可視化・統合・再構築する手法を学び、それを実践しながら技術資産を蓄積するなどを経験する中で、組織力が向上していき、次世代型業務に変わります。その中で、製品開発のタイムスパンと、技術資産管理強化や技術伝承のスパンに違いが産まれます。にも関わらず、製品開発よりも短期的な指標で投資対効果を判断する様なマネジメントや意思決定を経営層がしてはいけません。

この様な長中期的なスパンの投資に対しては、大きな方向性を示しつつも、小さく軌道修正を行いリスクを最小化するマネジメントが重要となります。そのことを経営層が理解するのみではなく、現場にも理解をさせ、現場主導で着実に進化を進められる様にできるかが成否を分けます。

この活動を進めていく過程で、目的を達成するために既存の仕組みや業務ルールを変える事も必要になります。しかし、既存の業務や仕組みを変える際には必ず多くのコンフリクトが現場に起きます。このコンフリクトで活動がつぶれない様にするためにも、活動しながら簡易的に検証し、進化させていくことが望ましいと思います。

技術伝承を進めるコツやポイント

  • まず「技術」という知的資産を統合する「設計プロセス」のモデルを獲得する
  • 上記のモデルを整備・活用する技術の教育を「技術リーダー候補」に行う
  • 小さな効果を創出しながら、「技術伝承」の活動を進化させる進め方を指向する

【Q5】技術伝承はすべて自力でできるか?

全て自力で行うという制約があると、自分たちが知り得る知識や技術のなかでできる活動となり、「従来型の開発業務、技術伝承手法から変えらない」に帰結してしまいます。

ここで、「技術伝承」や「技術資産の活用」の手法そのものも「技術」であることを強く認識し、世にある最新技術やそれを駆使する外部人材を活用することを検討した方が良い。つまり技術を扱う手法や製品開発手法そのものも、オープンイノベーションを行えることが望ましいのです。

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特に外部を活用すべきポイント3点

  • 「技術を可視化・活用する手法」の習得と、自社に合わせた最適化
  • 技術資産を統合するための「設計プロセス」のモデリングツール
  • 「技術伝承」という活動を効果に繋げるためのプランニングと実行支援

技術伝承で特にサポート/ツールが必要な部分

  • 暗黙知の可視化だけなら自力でできなくはないが、継続すること、再利用が可能な技術資産とすることを考えると専用のツールを利用することが望ましい
  • 自力では内部の利害関係などで頓挫するケースが多いため、外部の者が推進した方がスムーズに進む点が多い

【Q6】専門家を選ぶ際のポイントとは?

まずは技術を可視化・活用する手法」に対する方法論を持ち、それを駆使できる専門家であること。製品開発プロセス改革や、設計標準化・モジュール化などの手法への応用実績もなければ、ただのナレッジマネジメントやPDMツールを理解しているだけとなり物足りない。そして、「従来型の開発業務、技術伝承手法」から変わるためには、人は上記の知見では足りず、皆が目指すべき姿を描き、そこに向けたプランと現場を変えるための「チェンジマネジメント」を駆使した実践支援ができる、「コンサルティング」としての力量も重要となります。

最後に、近年の動向としてモノづくりもデジタライゼーションに対応し、生産性向上や効率化を実現する必要があります。この様な進化へとつなげるには、IT技術の専門家や、AIやデータアナリストに関する専門家サポートもあるのが望ましいと思います。IT技術といっても広いですが、特に軸となる「設計プロセスのモデリングツール」や、それを活用した技術情報や製品情報を管理する仕組みの構築に関する領域の専門性が必要です。

ワイ・ディ・シーでは、DCM領域の改革を専門とするコンサルティングチーム、IT技術やAI専門家を有しております。システムやツール販売を目的とせず、企業変革や進化を目的とした統合的なアドバイスや支援が可能です。

また、コンサルティング支援時に活用していたコンサルティングツールやテンプレートを汎用化し、設計プロセス専門のモデリングツールとして開発した「iD Suite」の販売やトレーニングサービスも開始しました。他の汎用的なツールを活用するよりも、重要な成功要素をデータ視点でも抑えた活動が容易となります。

専門家を選ぶ際のポイント

  • 技術を可視化・活用する手法に対する方法論を持っている
  • その方法論を駆使してプロジェクトを支援できる専門家である
  • プロジェクトの目指すべき姿を描くことができる
  • チェンジマネジメントを駆使した実践支援ができる
  • 技術や製品情報を管理する仕組み構築の領域に精通している

3回にわたり、熟練者の技術伝承を成功させるポイントについておはなしさせていただきました。本コラムが、社内の技術伝承にお役立ていただければ幸いです。

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