熟練者の技術伝承を成功させるポイント 失敗例編

2018.11.18

共動創発事業本部 八重島

前回の 「熟練者の技術伝承の難しさ」につづいて、今回は技術伝承における失敗例とその原因についてお話しします。

目次

  • 【Q2】よくある技術伝承の失敗例とは?
  • 【Q3】その失敗の原因はどこにある?

【Q2】よくある技術伝承の失敗例とは?

「技術伝承」という課題に取り組む活動をしている企業ならば、そのほとんどが非常に有意義な活動をしていますし、決して無駄にはならないことをしていますので、一言で失敗と言い切ることはできません。

しかし、我々はもっとその活動を継続的に活性化させて欲しいと常々感じておりますので、ここではその様に感じた例を挙げてみたいと思います。

例1.技術系文書を探しやすくする仕組みを作るだけに留まっている

過去に作成した設計成果物が紙のまま個人持ちファイルに閉じるといった管理をしている企業ならば、その情報を電子化し、一元管理し、何かあった時にすぐに見つかるようにしたいと考え、その様な情報管理基盤を構築すると思います。

この活動は、本来やらなければならない品質文書の管理そのものであって必要な取り組みではありますが、それをやることが「熟練者の技術伝承」という課題を解決できると勘違いしているケースが多くみられます。

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例2.熟練者の知識を文書化するだけに留まっている

これは「熟練者の技術伝承」という言葉から想起される通り、素直に熟練者の知識を文書などに落とそうというコンテンツ作りの活動となっているケースです。これだと、文書を作ることが目的となりがちで、活用することは現場任せになることがあります。

この様な活動に留まってしまうと、せっかく時間を掛けて作ったコンテンツの内容是非を問う「評論家」が多くあらわれ、活動成果が出ない事の戦犯を「技術」という資産を提供した側に押し付ける事に繋がりかねません。

その様な事にならないとしても、せっかく作ったコンテンツを使わない、(大変なので)コンテンツの作り手が他に出てこないなどの状況に陥り、「有意義な活動だったにも関わらず、活用されない事で成果に結びつかなくて上からの評価が低い」という結果になりがちです。

実際に、「技術伝承」という活動を継続的に行えている企業は少なく、その様な活動を一時期したとしても、せっかく作ったコンテンツが徐々に実態と剥離してきて形骸化してしまっているというケースが多くみられます。

例3.熟練者が若手をOJTで教育するだけに留まっている

熟練者が教育のためのコンテンツを作ったり勉強会を開いたりして、若手がそれを教育の一環として受けるようなケースで、OJTによる技術伝承も基本的にはこれに当てはまるパターンの一つです。この様な活動は製造業ならば必ずすべき活動であり、我々がご支援する際にもその施策としてよく挙がるものでもあります。

しかし、結局は「教育がOJT頼り」という、従来通りのやり方から変えられていない状況とも言えます。言い換えると「人から人への属人的な技術伝承」であり、悪く言えば「長年かけて後継者を育成する徒弟制度」の様なやり方に近いとも見えます。

もちろん、これらの教育的な活動すらしない企業の方が危険ですが、「熟練者の技術伝承」というテーマに対策していると思っているならば、この活動だけに頼り切ってしまうのは少し危険な兆候だといえます。

「熟練者の技術伝承」が何故重要課題なのか、その課題に対策するとはどういうことなのかをもう一度考えて欲しいと思います。

技術伝承としてもの足りない例

  • 熟練者のノウハウを文書化するだけの技術伝承取組み
  • 散在する技術文書が探しやすくなればいいと思っている技術伝承取組み
  • OJT頼りの技術伝承取組み

【Q3】その失敗の原因はどこにある?

一言で言うと「今までやってきている技術伝承のやり方で十分だ」という意識がある事が原因だと感じております。そういう意識となる根っこには「従来型の開発業務から変わらなければ生き残れない」という危機感の欠如があるのではないでしょうか。

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もし、以下の様な状況がまかり通っている様ならば要注意です。

こんな状況に注意
  • 基本的には社内や部内など、ある組織グループに閉じた技術伝承である
  • 組織の人材構成は階層的にあり基本的に世代が上から段階的に構成されている中で、技術伝承の方向は上から下への一方向で行われる
  • 技術伝承の手法は、OJTの中で同じ経験をしながら相手に内在化させる手法に頼り、そのやり方などの裁量は教える側に委ねている
  • 開発業務が従来から変わらずに、「技術伝承」はその余剰時間、余剰人員でやる位置づけとなっている


この様な考えや手法は、高度成長期の製造業に見られる終身雇用を基本とした人事評価制度の中、一方向に組織が大きくなり連続的な成長を実現してきた時期には非常に上手くいったのですが、ビジネス環境が変わる中で従来のやり方が通用しなくなってきていることが「熟練者の技術伝承」の難易度を高めており、多くの企業から課題として挙げられている背景としてあります。

昨今、製造業を取り巻く環境として「深刻な人材不足の恒常化」があり、そうなると人材の流動性も高まります。また市場環境変化や技術発展も非常に早くなってきており、従来のように数年かけて同じ業務を経験させながら「技術伝承」を行う事が困難になってきております。

この様な状況に対応していくためには、従来成功したやり方に固執せず、その手法を更に進化したものに変えていかなければなりません。その為にも「技術伝承」というテーマに対して危機感ともいえる課題認識を経営層やマネジメント層がもち、その様な彼らの庇護のもとで、現場は新たな手法を業務に愚直に組み込んでいく活動を回せる様にしていかなければならないと思います。

そして、その活動が組織に閉じず、その活動成果を全体としての組織力向上に繋げるために、それらをいかに統合し、最適化していくかが重要となります。

技術伝承の失敗の原因
  • 今まで通りの技術伝承のやり方で十分だという意識がある
  • 現場は技術伝承ができていると思い込んでいる
  • 現場にもメリットがあることをうまく伝えられていない
  • 活動のオーナーである経営層が不在な状態になっている

次回は「熟練者の技術伝承を成功させるポイント」コラム最終回、技術伝承を実際に進めるためのポイントについてお話しします

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