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RFID実証実験から見えた期待 ~将来的な労働力減少に向けた技術~
SmartSCM事業本部 ICT基盤ソリューション部 ナカバ
本記事担当のナカバです。
将来的な労働力減少に伴い、昨今無人決済などの自動化技術が注目を浴びています。
それを支える技術の一つとして「RFID」があります。
無人決済については、経済産業省の支援の下、コンビニや薬局での個品レベルのRFID活用の実証実験が行われています。
今回は、その個品の実証実験で私の感じた課題と期待を述べさせていただきます。
1.RFIDとは
Radio Frequency IDentifier の略あり、ID情報を埋め込んだ電子タグとなります。
電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信で、情報を読取する仕組みであり、
昨今では食品・衣料品といった個品レベルの管理視点での利用検討が進んでいます。
図1:実際のRFIDタグイメージ
個品の管理をすることにより、以下のような効果が期待されています。
・食品ロスの削減
・購買傾向からの商品提案
・高速決済・自動棚卸
・万引き防止
2.個品としてのRFID利用シーン
衣料品業界では、購入者が自ら読み取り機に商品のRFIDをかざして清算を行うセルフレジの運用が既に始まっています。
また、コンビニエンスストアや薬局では、以下のような利用シーンと効果が想定されています。
(1)ダイナミックプライシング :食品ロス削減
(2)デジタルサイネージによるターゲティング広告 :購買傾向からの商品提案
(3)電子タグ(RFID)リーダー付レジの設置 :高速決済
(4)情報共有システム活用 :自動棚卸、万引き防止
図2:ダイナミックプライシングのチラシ
2月に経産省主導のもと、そういった利用シーンの実証実験が行われていました。
3.経済産業省が実施したRFID実証実験について
経済産業省の実証実験の目的は3つあります。いずれもRFIDを使った個品情報を元にしたサービスの連携検証となります。
(1) サプライチェーンのプレーヤー間の連携
サプライチェーン間の商品の入出荷情報を蓄積・共有し、商品の流れを可視化
(2) 店舗と生活者との連携
生活者の購買情報を蓄積し、消費期限切れ商品の削減や、生活者の購買行動を基にしたおすすめ商品などの
有益な情報の提供
(3) 電子タグを用いた家庭内サービスの体験
RFIDを活用した家庭内備蓄情報の可視化や、料理レシピやごみの分別の指南などの家庭内環境のスマート化
その中で(2)の実証実験が体験できた店舗は以下の通りとなります。
■実験店舗
・ウエルシア 千代田御茶ノ水店
・ココカラファイン 清澄白河店
・ツルハドラッグ 目黒中根店
・ミニストップ神田錦町3丁目店
・ローソン ゲートシティ大崎アトリウム店
・東京ガス横浜ショールーム
図3:実証実験店舗イメージ
【参考】
http://www.meti.go.jp/press/2018/02/20190208003/20190208003.html
私はその中から個品全てにタグをつける試みを行っていた「ウエルシア 千代田御茶ノ水店」と
私の立場で感じた期待を次項で述べさせていただこうと思います。
4.実証実験店舗にて感じた課題と期待
・電子タグ(RFID)のコスト
100円未満の商品は、現在のタグの単価が見合わないのではないかという点が気になりました。
実証店舗にたまたまおられた開発者の方へ伺いましたが2025年を目途に、電子タグを1円以下での提供の実現を目指して進んでいるとのこと。
その改善が待たれます。
・タグの大きさ/材質
小さい商品の場合、タグが大きくその商品自体を隠してしまっていることがありました。
また、金属製の缶製品などはタグを読み取れないケースもありました。
現状は店舗ではタグ位置を工夫する配慮をしていましたが、金属製品自体へのタグの組込や小さい製品用のタグサイズの縮小化が期待されます。
・タグは電子レンジ不可
現状のタグは電子レンジに対応できないとの事でした。
その為、実証店舗でも電子レンジを使用する前にタグを外す対応となっていました。
タグを読取ると同時に剥がし、タグ情報から適温に温める機器が欲しいと感じます。
昨今のスーパーでは自分で詰める量り売り式の弁当なども存在します。
上記のような商品は、携帯やICカードで決済し、RFIDと別する方法もあると思います。
図4:電子レンジを使用する食品群
・タグが"貼り付け"形式
個品は量が多いですが、現状は手で貼る運用であり、とても労力がかかっているようです。
また外箱や外袋がない場合、タグを剥がす際に商品への傷付けが起こる可能性があります
実証実験店舗では外装がない雑誌は紐でつけるといった工夫をしていました。
バーコードのように商品自体へ組み込まれていけば、自然と解決するかもしれません。
・タグを活用するための広告内容と情報量
タグ情報を元に購入意欲を持ち手に取った商品のCMが表示されており、その商品自体の既知である広告内容へ一切興味を持てませんでした。
新情報や次に繋がる気づきが得られない広告内容は広告の役割を果たしていない印象です。商品を手に取ってからの広告表示に数秒待つ遅さから、広告を見る機会も疑問があります。
将来的には購買傾向から予測したオススメ商品を知らせるなどの内容の工夫がされ、前に立てば広告が流れているような空間で予測した広告が今後のポイントかもしれません。
・現状との違いから感じたタグの不便さ
レジの待ち時間解消のみでは、既存のバーコードからの目新しさは少ないと感じました。 また、個品毎にタグが貼り付けられているということもあり、購入後のタグが思った以上に邪魔になってしまい、剥がす手間とごみが増えてしまう点が気になりました。
今後自宅でタグを再利用でき、賞味期限など管理できると見方が変わるかもしれません。
更に細かな点では、貼り付け式のタグが剥がれてレジ袋へ付着する点も気になりました。
5.最後に
RFIDはコンビニ店舗での実証実験が行われている通り、食品や薬品などを扱う店舗でも各所で実用化が検討されつつあります。
現状では個品管理に用いている既存のバーコードとの差別化が難しいという印象もありましたが、世間の認知度が高まり、人・物の導線を含めたサービスへ反映できるような基盤が実現できれば、労働力確保の問題に対する解決策になるのではないかという可能性も感じました。
今回は、RFIDという技術の実証実験店舗で見てきた内容を私の目線で発信させていただきました。弊社では新技術にも目を向け活動しており、今後もこういった社会を支える技術やの情報を発信していければと思います。
次回もお楽しみに。