ハードウェアアップデート機能は武器にならないか?

2020.09.23
代表取締役社長 山本智明

いつもご愛読頂き、誠にありがとうございます。
モノづくりの付加価値を考えていく上で、ハードウェアアップデート機能が大きな武器になるのではと思い今回のテーマとしました。ソフトウェアはアップデートできる事が大きな付加価値でもあり、スマートフォンのアプリケーションを始めとしてクラウド環境でも現在この流れは一般的になってきています。

S_Column_202009_1.jpg最初はコラムのテーマとして長寿命化が付加価値の大きな武器にならないかと考えていました。そもそもモノが売れなくなっている要素の一つとして長寿命化が気になっていました。世の中にある製造物、構造物というのは長年の基礎研究により新素材が生み出される事により年々部材、部品の耐久力は向上しています。私が小さいころ、例えば昭和40年代と現在を比べれば素材の進化は目覚ましいものがあると感じますので、今後20年後と考えても想像できない程向上するように感じます。

ユーザー視点からすれば家や車、生活家電等、色々なモノが長寿命でメンテナンスフリーであればとても嬉しいのは事実ですが、当然買い替え需要サイクルが長くなればモノが売れにくくなります。事実、自動車においても買い替えのサイクルは年々じわじわと伸びて来ている記事を拝見します。もちろん、電子機器のようにCPUや通信分野で利用される半導体技術を始めとしたハイテク分野は進化が激しいので、長寿命であっても性能が陳腐化する事により、長寿命化の意味があまりないようなモノもあると思いますが、家や車、生活家電においては買い替える程ではないけれども部分的には変化・進化してもらいたい箇所もあります。

今後さらに科学技術が発達すれば、何十年も壊れないモノもそう大きくないコストで提供できるようになると思われます。
そうすると、益々買い替え需要が減り、別の理由でなければ需要が創造できないのではとも思います。

しかし、人間はそう単純でもありません。同じものを長年使えば愛着も出ますが飽きるという現象も同時に起こりますし、ブームが起これば欲しくなるというのも人間です。それ以外には電子機器の代表的な故障要因で述べられているコンデンサーやゴム製品のように耐久性向上が難しいと思われる分野もあるので買い替え需要が直近でなくなる訳ではありません。
しかし、マクロでみると確実に各種素材は進化すると思うので総合的な耐久性は向上していくと思います。

モノが売れなくなる原因は残念ながら他にも多く挙げられます。モノを買う人の数が一番根本的なところですが、世界人口では1980年代後半から急速に成長率が鈍化し始めており、今世紀半ばから世界的な人口減少が進むという分析も出て来ております。また、中古流通ビジネスやシェアリングモデルの継続的な進化が挙げられます。説明は必要ないと思いますが、不要な人と必要な人を一瞬でマッチングできれば必要以上の生産は不要です。耐久性が向上すれば中古市場はさらに活性化します。次に根本的なところでは、我々の身近にあるモノで、生活する上での必要十分な性能は技術的に概ねクリアされている事も大きな点です。性能向上余地が無いとは言いませんが、性能向上で得られる満足感や驚きの幅が薄くなり、耐久性が高くなれば買い替え意欲をそれほど向上できないと思われます。

S_Column_202009_2.jpgまた、少し違う意味にもなりますが、究極の効率化起因も想定されます。これは生産性向上及び物流進化に起因しますが、短時間に多く作り、それを配送する技術は凄い勢いで進化しています。グローバル化もこの中に包含されますが、サプライチェーンの効率化を行えば短時間での大量生産と配送であっという間に市場飽和するので、飽和時間差を利用したリージョン毎での販売分担が見込めなくなり、世界レベルで勝者総取りがより顕著になります。これは売れないというよりは、市場を取れる人が限られる現象です。

そういう意味では「飽きる」という人間の性質はとても有難い要素です。色々考えていくと、どの道さらに耐久性が向上していくのではあれば、それを逆手に取って圧倒的な高耐久を目指してはどうかと考えました。全体設計として基本モジュールは高耐久にします。とはいえ、先程のコンデンサーやゴム部品のように対応が困難な部分が実質存在するとすれば、敢えて今後高耐久化や新機能を搭載したモジュールへのアップグレードも可能にして進化を売りにしてはどうかと思いました。保守保全では維持が目的で進化しないので、ここをどう魅力的でワクワクする変化進化を見せられるかがモジュール化の腕の見せ所になります。新しい機能追加やデザイン変化も対応すれば「飽き」にも対応できます。

現在テスラが自動車のソフトウェアアップグレード戦略を取って成功を収めていますが、あくまでソフトウェアに特化している事もあるので、日本が物理的なモノづくりが強い事を考えれば、ハードウェアをなるべくモジュール型、プラグイン型にして組み替える事によってハードウェアをアップグレードできれば、大きなアドバンテージを出せるのではと考えられます。ハードウェアのモジュール化、プラグイン化というのは材料技術や高度な加工精度が求められるので、ソフトウェアと違って日本の製造技術が大きく活かせるのではと思います。これはある意味ハードウェアのプラットフォーマーとしてのポジション取りを目指すことになります。

例えばコンピュータはハードウェアアップデートが出来る分かりやすい代表例です。主に据え置き型ですがCPUを変えたり、メモリやハードディスクを増設したり、USB等の拡張インターフェースによって機能向上や機能付加が可能です。他の電化製品ではあまりこのようなハードウェア拡張概念がほとんどありません。アップグレードとは少し違いますが、一眼レフカメラは大きなヒントになります。カメラでは高価なレンズを変える事によって付加価値の拡張が可能です。部品一つ一つが物凄い精度が必要で未だにこの分野は新興勢力に追いつかれていません。

冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどもハードウェアアップグレードできるアイデアは色々ありそうですが、現在は古くなったら買い替えるとか一部故障したら捨てるとかエコでもなく長寿命でもなく、アップグレードもできずと面白みに欠けます。以前のコラムで家電のモジュール化、ユニット化を記載しましたが、これも進化、変化対応の一例になると思います。

S_Column_202009_3.jpg外観を変えられるとか、性能を変更できるとか、例えば冷蔵庫であれば真空機能を追加するとかプラズマイオン機能を追加できるとか、AI付きのドアに変換できるとか何か色々出来るようにも思います。壊れないというのも日本品質の専売特許だったと思うので、積み上げた材料技術を生かしてさらに賢いモジュール設計で総合的な耐久力は上げつつ弱いところはユーザーでも交換、アップグレードできるようになれば新しい価値が提供できる可能性があるように思います。

モジュール化すればモジュールの在庫保持など色々ハードルはあるかもしれませんが、こちらも近年、中古、新品部品合わせて流通の仕組みがインターネットでエコシステムとして出来上がってきているので、逆にこの現象を積極的に活用すれば、市場自体に多くのモジュールが出回る事によって総合的なストック在庫として活用できるという事もあります。

価格が高くて一回売り切りの短期保証ではなく、デザイン性も向上させ素材もこだわり、製品の基礎モジュール耐久力は高くし、長期保証はするがハードウェアアップグレードも可能で、好みのカスタマイズも出来るとなると継続的な商売も見込め、新しい価値や感動も提供出来る可能性がありそうに思います。

さて、皆さんはどのように思われますか?

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