XRの可能性

2020.02.17
代表取締役社長 山本 智明

最近XRの可能性を色々調べています。
XRとは、近年IT市場を席巻しているVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)等の仮想世界と現実を融合する技術の総称です。

S_Collumn_202002_1.jpgその中でもARに関しては色々な分野で画期的な変革がもたらされるとは思いますが、製造業においてもかなり有用な技術ではないかと思っています。先日ウェアラブルExpoが開催され色々拝見しましたが、点検や修理の分野ではARではないですが、スマートグラスでマニュアルやリモート指示などは多数展示がされてきました。

少し前にグーグルグラスが登場し、ARの可能性の広がりを期待しましたが、バッテリーの問題や画像、音声認識も十分なレベルではなかった為、実用レベルとしての本格展開は厳しい状況だったと思います。

しかしながら現在ではバッテリーの問題はもう少し進化が必要ですがAIでの画像認証、音声認識、5Gの発展が複合的に効いてきて実用期が来るのではないかと期待が膨らみます。これは高速なCPUと莫大な記憶領域によって到来した第3次AIブームでAIの活用が実用的なレベルまで到達しつつある現状にも似ています。

通信性能の向上が実現されればエッジ側で計算する量が大きく削減できるので、それに伴うCPU、電池など負担が軽減されます。5Gは反応速度が高いことも利点であり、結果としてエッジ側とクラウド側の情報伝達が向上する為、よりリアルタイムでの作業に向きます。

最近サングラス型のARグラスが色々出始めておりアップルもAR領域にポストiPhoneとして多大な投資を行なっており、スマートフォンから次のデバイスとしての位置付けを模索しているようです。スマートフォンの性能や普及率を考えると、この流れは自然です。

ARが優れていると思うのは、人間にとって一番最適なインターフェースではないかと思う点です。生産現場ではデジタルツインの概念が提唱されていますが、これは現実世界と同等の内容をシミュレートすることにより、効率性の確認や対策が可能となります。ただし、全ての作業や工程をシミュレートするのは効率が悪いですし、リアルタイムで見えているものに対して必要な情報を得る事が出来れば、それでも十分有用性があるように思います。S_Column_202002_2.jpg

全ての物についてモデル化するのは理想的ではありますが、将来的には可能としても直近ではモデル化への労力や処理性能において部分的な対応が現実的と思われます。その点、ARは拡張現実なので、そもそもの目的が現実世界の補完となりますのでこの点において部分適用に向いている技術ではないでしょうか?

例えば、各種モニタリングも何時も見たい訳ではなく、問題がある時か違和感のある時だけ見たいのが本音だと思うので、必要な時に必要な情報を確認することが出来れば、平時の鬱陶しさもなくなります。当然、問題が発生する場合に集中監視からアラートが発生するようにすれば良いという発想もありますが、アラートの閾値設定は、それはそれで難しい問題です。

AIでの予兆検知技術も現在多く試されていますが、この分野は全ての局面で人間に取って代わるにはもう少し試行錯誤が必要だと思われます。

他には倉庫内でのピッキングの様な作業も、カメラが対象を探して見つけたらピッキングすべき物をマークしてくれればとても便利です。両手を開けるにはグラス以外に選択肢がない様に思いますのでこういう処理はスマートグラスが一番フィットします。

手作業で行う工程も、作業者の作業の様子をダイレクトに見ながら過去の製造実績を確認し、何が生産工程に影響を与えているのかを確認するとか、流れ作業の場合でも問題のあるところをデータで確認しながら、目の前の作業者の動きを同時に確認すればより問題点が浮き彫りになる様にも思います。

作業のガイダンスはかなりITが入り込んで来ましたが、この分野でもグラス上に標準作業を動画で出して何が違うのかを確認する事も出来ます。動画を撮って見比べるというのは今も良く行うとは思いますが、見たまま録画でき、確認したいときに直ぐに呼び出せるのはかなり魅力的です。
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また、標準作業より圧倒的に良いやり方を作業者が行なっている場合も、その場で録画する事が出来れば、他の人との比較や他の人への共有として直ぐに展開出来るなど利用方法が広がります。この分野はウェアラブルExpoでも出展されていますので既に実現可能です。

スマートグラスはその場で直ぐに確認出来るというのが一番良い点でないかと思われます。スマートフォンやタブレット、ハンディ端末で良いではないかという意見もありますが、見たものそのものを認識して直ぐにデータに辿りつける事は圧倒的に便利なので行動が確実に変化すると思います。また、日々の改善は発見したその場で簡単に記録出来ないと日報や報告を書くのは面倒なので疎かになりがちです。情報を残すことが簡単であれば、本来集まらない情報が集まる可能性もありますし、情報の濃さも期待が持てます。

スマートグラスの場合、常に触れてない為にインターフェースは音声認識が必須機能でしょう。何か普段と違う場合に、「この機械のメンテナンスデータを見せて」と話をすればグラス上にデータが表示されたり、今日の処理履歴や稼働トレンドなど必要な物をリアルタイムで確認出来れば色々な気づきが得られる可能性があります。

また、製品に対しても色々と付加価値を付ける事が出来ます。車などオプションを装着した場合やカスタム仕様にした場合も、変更箇所をARで補填し可視化する事でよりリアルにイメージ出来ます。 ARの録画技術を付加出来れば屋外での特別な体験を家庭など別の場所で再体験することも出来ます。

全てをVRで行えばという意見もあるかもしれませんが、先程の車の例ではオプションを付けたままで自分のお気に入りの場所に駐車したり、他人に運転して貰う事で動いている時のイメージを確認する事ができれば所有している自分を高い解像度でイメージできます。この場合は現実の背景がとても重要になるので、ARが一番フィットします。XR技術は色々な可能性があるので今後がとても楽しみです。

皆さんはどう思われますか?

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