製造業は衰退してはいけない

2019.07.22

代表取締役社長 山本 智明

いつもご愛読頂き、誠にありがとうございます。 

今回は少し違った話を書くことにしました。YDCでは「日本の製造業が従来の枠を超え、新たな需要を創造していくための活動を共にデザインする」というビジョンを持って活動しております。

よって、このコラムについてもITの話を色々書くのではなく、何かお客様がビジネスを広げる上でのヒントにならないかと微力ながら色々考えてきました。 しかし、最近は特に不安を感じる事が多いので、ありきたりな内容かもしれませんが個人的に製造業について感じている事を書いてみます。

まず、最初に私の勝手な製造業の定義は「付加価値のあるものづくり」をするという事なので、総務省が規定する「日本標準産業分類」よりは広く捉えています。 例えば、農業もそうですし、植林の林業、養殖の漁業、建設業、実態のないソフトウェア、アニメーション等の知財も「ものづくり」と考えています。 現在の製造業がつくりだす「もの」は、独立した製品を作るだけではなく、サービスやソフトウェアを融合した「もの」になってきているので、製造業と定義しすぎると発想が狭まり良くないようにも思います。

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それを踏まえて私が製造業をITで支えたいとこだわっているのは、日本には資源が無いという事に起因しています。 日本は昔から資源が無い為に加工貿易をして外貨を稼いでおり、その稼いだ外貨で生活を豊かにする日本にないエネルギー、食糧、建設資材等の資源を外国から輸入して利用してきたと思います。最近では太陽光発電所の増加や近海にメタンハイドレートが眠っている等の話があり、自然エネルギーの利用や埋蔵エネルギーでいつかは自給自足できるのではという夢がありますが、実現するのは当分先でしょうし、エネルギー以外の資源も多く輸入に頼っているので、この構造は当分変わらないと思っています。

そうすると、やはり付加価値を生み出して外貨を稼がなければなりません。

優秀な学生が製造業に入ってくれれば業界も活性化すると思うのですが、理系の学生も減ってきており、就職の人気ランキングにも公務員が上位に来ていたりします。 職業の自由があるので仕方ないのですが、例えば今までは圧倒的な存在感を持っていた大手電機メーカーは苦戦しており、学生から見ると将来性に不安を感じるのかもしれません。 自動車業界はまだまだ強いのですが、IT&電気自動車の波が押し寄せている現状をみれば、学生も色々悩んでいるようにも思われます。

素材や部品メーカー等の川上産業にはニッチトップで元気な会社も多くありますが、学生にとっては身近に接する最終製品そのものではない事と、ブランド名も出ないのでイメージが湧きづらく、結局製造業に進まないというのもあるのかもしれません。また、収益性が低い製造業だと当然給料も安くなるので、給料が高い他の業種が良く見えてさらに製造業を敬遠するという悪循環に陥っているようにも思われます。

豊かさの意味について議論はあるとしても「ものづくり」が強くない国で、豊かな国はありますでしょうか? アメリカも製造業と言うと民生品は強い物が一見なさそうですが、コア技術がなければ強いアメリカを保持できてないはずです。 特にハイテク兵器はアメリカが圧倒的な強さを持っています。また大型旅客機も独壇場です。 宇宙に関係する技術もアメリカがかなりのシェアを持っています。コンピュータのコア技術もしかりです。 CPUやネットワーク、基本OSはほとんどアメリカのものです。今回のファーウェイ問題から如何にコア技術をアメリカが握っているのかというのが明らかになったと思います。

ひと昔前、アメリカは民生品も強かったのですが、家電、自動車の大半が日本、ドイツに浸食された歴史を考えると日本も中国、韓国、これからはインドや東南アジアに浸食されていく運命だと思います。

では、家電、自動車の時のように現在のアメリカの強い分野に浸食して前回と同様の成功パターンを考えるのも、これはこれで一つの策ではありますが、アメリカも技術漏洩にはかなりの慎重さを持っていますし、現在の日本が国をあげて多額の投資をしているかというと、それも少し寂しいかと思われます。 旅客機はHondaJetやMRJが奮闘していますし、宇宙分野も重工業メーカーやJAXAが頑張っていますが、もう少し厚みを増さなければ、アメリカに追いついて追い越す前に引き離されるか、中国、インドなどに先を越される事にもなりかねません。

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当然製造業というのは最終製品だけではないので、素材、部品の川上産業や加工する装置製造に特化して伸ばすというのもありますが、アップルの様に自分で企画設計していかなければ大きな付加価値を得る事ができませんし、そもそも市場創造のポジショニングを得られません。代替不可能な製品を作ればセットメーカーよりも強くなることもできますが、現在ではアップルやアマゾン、グーグルのように顧客基盤を持って戦略を考えた上で仕様を決める立場が強いという事もあるので、クアルコムのような突出した知財でなければプラットフォーム企業に主導権を奪われがちです。

インテルやクアルコムは川上産業ですが、圧倒的な強さを持っています。 しかし、日本の半導体、液晶は部材としては川上産業ですが逆に弱い立場になっているように思われます。 この差は何なのでしょうか?  

例えば2018年の研究開発費はインテルで135億ドルも投資していますし、クアルコムは売上の20%を毎年投資に回しています。上記企業が単年度だけではなく毎年この額を投資し続けていたら、追いつくどころかどんどん引き離されて行きます。 大量に作る事で原価を低減しシェアを握るというビジネスでは新興勢力には勝てないので、結果現在のアメリカ企業のように時間もお金もかけた新しい技術での製品・サービスを作らなければなりません。しかし日本は研究開発もそうですが、PoCでさえも潤沢には投資していないように思われます。

中途半端では勝てないグローバル覇権争いなので、人口減が進む日本でさらに製造業離れが進む若い人を見ると10年、20年後の日本がとても心配です。

さて、みなさんはどのように感じておられますか?

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