ランドロイドの失敗と現実的なハイテク利用

代表取締役社長 山本 智明

いつもご愛読頂き、誠にありがとうございます。

メディアではランドロイド失敗のニュースが大々的に報じられ、失敗の原因や、ハイテク投資へのリスクについて様々な記事が掲載されています。私が本コラムにて取り上げるのはどうかと思いましたが、本件は過去のコラムでも触れた事もあり、どうしてもこの出来事と、それに伴う心配な点については触れなければと思いました。

ランドロイドをご存じない方の為に少しだけ説明をすると、ランドロイドはセブン・ドリーマーズ・ランドロイド社がAIを使って洗濯物の衣類を自動で折り畳むという世界初の家電を作ろうとしたプロジェクトです。

IT技術とエレクトロニクスの国際展示会である「CEATEC」でも大々的に展示を行い、メディアにも多くの記事で紹介され、ハイテク投資としてとても象徴的なプロジェクトであったと思います。私もCEATECの展示ブースに立ち寄り、人だかりの中でプレゼンテーションを拝聴し、ついに家庭にもAIが入ってくる時代が到来するのかと思いワクワクしました。

実際に衣類を畳む技術は、現在多くの実用化事例が出て来たディープラーニングを活用した画像処理を用いていました。他の記事にもいろいろ解説されているのですが、実用化に至らなかったのは、高度な画像認識の問題や、折り畳む機械的な処理が困難であったことが理由のようです。 

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ここで私が心配するのは、本件がメディアに大きく取り上げられる事象であるが故に、短絡的に「なんだ、やっぱりAIは駄目なんだね」と第3次AIブームの終焉のトリガーにならなければと思う点です。現在、外部を取り巻く環境もあまり良くなく、経済情勢では10月の消費税増税や、アメリカと中国の経済問題、韓国問題等の影響から景気も弱含みになっていますし、イギリスのブレグジット問題、EU、中東の不安定化と世界的にも少し先が見えない状況になっており、「どんどん投資をするぞ!」という環境からは少しトーンが落ちてきているところで、このニュースはタイミングが良くないとも思いました。

また技術面でもAI、IoTを始めとし、LPWA、日本版GPS、LiDAR、3Dプリンティング、AR、5G等のハイテクがここ数年立て続けに出現し、インダストリー4.0、Society5.0の流れが大きくなってきました。ガートナーのハイプサイクルではないですが、PoC(実証実験)が進んだ結果、「実用化は現実的には少し難しいなぁ、少しハイテクに期待しすぎたかな?」という人も増えて来ているように感じます。車の自動運転も高速道路の自動化は進みそうですが、一般道路の自動化については困難度合いが具体的に見えて来て少しトーンが落ちている様に感じます。

しかし、このコラムを読んで頂いている方にはもう少し長い目での判断をお願いしたいと思います。長期的に見れば上記の技術はさらに進化しますし、私の過去の記事で記載しましたが、現在の技術レベルで解決できる企業問題、社会問題は沢山存在していると感じています。中でも人口減少問題は唯一確実に予測できる問題であり、問題の大きさもインパクトがあるものです。
 2019年現在の年齢別人口構成は明確に分かっているので、5年後、10年後の人口構成は確実に予測可能です。

人口減少にまつわる問題、企業で言えば少ない人員で本社、工場、事業所を運営する仕組み(営業効率、事務効率、生産効率)、質の面から言えば、個人の頭にしかない技能の伝承と活用、さらには取引先、販売先を巻き込んだサプライチェーン全体の効率化等は、上記の技術で解決、または緩和可能なものが多く存在しています。

社会問題で言えば、高齢化に伴う過疎対策、健康維持の為の管理の仕組み、医療サポートの高度化、高齢になっても自由に移動できる移動手段の提供など、対処すべき課題は山のようにあります。

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確かに簡単に直ぐに使えて飛び抜けた効果が出る技術があれば理想ですが、発展途上の上記新技術においても現状の対応限界をしっかりと見極めて、現実の課題を精査し、照らし合わせて解決できるものについては積極的に利用していくことが必要です。また、IoT+5G、LPWA+クラウド+AIのように新技術は単発で利用するのではなく、複合で利用する事でさらなるブレークスルーが可能になりますので、部分最適に加え、全体最適の視点も忘れずに検討頂けると良いと思います。

ただ問題としては、技術の複合利用と全体最適では必ず組織の問題や役割分担等の「変えたくない、変わりたくない気持ち」も発生しますし、「組織横断だけに誰がリードするのか分からない。自分が言い出さなくても誰かがやるだろう」等というどちらかと言うと、技術より難しい人間系の問題も必ず発生します。

これは技術では解決できない問題なので、このコラムを読んで頂いている皆様が勇気を持って上位層を巻き込み、慎重にデザインされたプロジェクト立上げを行う事ができればと切に願うと共に、お手伝いが出来ればと思っています。

皆さん、将来的な課題対策は万全でしょうか?

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